住宅を売却する際には、隣接する土地との境界を示した「境界画定図」があれば、売却後のトラブルを回避できるので安心です。また、住宅を売却する際にあると安心な書類の一つに「住宅性能評価書」があります。
住宅性能評価書はきちんとした制度に基づいて発行されており、万が一トラブルが発生した際にも指定された紛争処理機関が仲介してくれるので安心です。
ここでは、住宅性能評価書の特徴やメリットに加えて、手続き方法などを解説していきます。
住宅性能評価書とは

近年は、セキュリティ面の強化や省エネルギー性に優れた住宅への需要が高まっています。また、いつ起こるかわからない大規模な地震に備えて、安心な構造であることが求められています。
住宅性能表示制度に基づいて発行されるもの
住宅性能評価書とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律による「住宅性能表示制度」に基づいて発行される書類のことを指しています。この制度は、法律に基づいた一定の基準に沿った住宅性能を表示および評価することを目的としています。
住宅性能評価書には以下のような2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
設計住宅性能評価書
設計住宅性能評価書は、住宅の設計段階で住宅性能を評価して発行されます。住宅購入者の利益を保護することを目的とした「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、設計住宅性能評価書での評価がそのまま売買契約の内容に反映される場合があるとされています。
建設住宅性能評価書
建設住宅性能評価書は設計住宅性能評価書が住宅の設計時に評価されるのに対し、住宅の建設時や完成時に住宅性能を評価して発行されます。
設計住宅性能評価書と同様に住宅の品質確保の促進等に関する法律では、建設住宅性能評価書での評価がそのまま売買契約の内容に反映される場合があるとされています。
10分野32項目を評価する
住宅性能評価書では、以下のような10分野に分けて基準が設定されています。
- 構造の安定性
- 火災時の安全性
- 劣化の軽減
- 維持管理・更新への配慮
- 温熱環境・エネルギー消費量
- 空気環境
- 光・視環境
- 音環境
- 高齢者等への配慮
- 防犯対策
これらの分野のうち、構造の安定性、劣化の軽減、維持管理・更新への配慮・温熱環境の4つは必須項目ですが、残りの6つはオプションとなっています。また、10分野で32の評価項目が設定されており、1~3点で評価されます。
住宅性能評価書を申請するメリット

住宅性能評価書を取得していると品質や性能が一定の水準を満たした住宅として見なされるため、売り出す際に有利です。また、売却後にトラブルに発展した際には、紛争機関が仲裁に入ってくれるので安心です。
高い資産評価が得られ売却するときに有利
住宅の外観や内装が良く見えても、実は欠陥だらけだったというケースも少なくはありません。近年では全国各地で地震や豪雨などの自然災害が猛威を奮っているため、高品質で高性能な住宅への需要がより一層高まっています。
売却する住宅が住宅性能評価書を取得している場合、品質や性能に関して高い資産評価が得られます。
住宅性能表示制度の普及率は平成26年度のデータでは20%程度に留まっていますが、購入希望者にとって物件の性能や品質がわかりやすく安心して購入できることから、有利に売却できると言えるでしょう。
売却後トラブルが起こったとき紛争機関が間に入ってくれる
住宅を売却後に重大な欠陥が見つかった場合、売主が瑕疵(かし)担保責任に問われ、損害賠償を請求されるリスクが潜んでいます。そのため売却前に耐震診断や測量を受けるなどして、リスクに備えることが大切です。
しかし、細心の注意を払って売却したにも関わらず、売主が気づかない欠陥が発生する可能性もあります。住宅性能評価書のうち建設住宅性能評価書が交付された住宅であれば、万が一トラブルが発生した際に、指定住宅紛争処理機関に紛争処理を申請できます。
指定住宅紛争処理機関とは住宅の紛争を処理するための機関のことで、裁判に発展することなく住宅の紛争を円滑に処理することを目的としています。なお、 紛争処理を依頼した場合には手数料が必要となり、1件あたり1万円かかります。
「住宅ローン」や「地震保険」などを利用するときも有利
住宅の購入は非常に高額な買い物となるため、住宅ローンを利用する人がほとんどです。住宅ローンを申し込む際には金融機関側が対象となる住宅を担保とするため、住宅性能評価書があれば有利です。
損害保険協会によると、地震保険の普及率は2002年度が33.3%だったのに対し、2017年度には63.3%と2倍となっています。このデータから近年頻発する大規模地震に対して備える人が増えていることがわかり、消費者の意識が確実に変化しています。
住宅性能評価書があると、住宅ローンだけでなく地震保険を利用する際にも有利に働き、住宅ローンの金利優遇が受けられたり、地震保険の割引が適用されるというメリットがあります。
不動産売却する場合は一括査定サイトを利用する

住宅性能評価書を取得しておくと、住宅ローンや地震保険を利用する際に有利に働くだけでなく、高性能で高品質であることがわかるため、売却の際にも有利に働くことがメリットとして挙げられます。また、売却する際には一括査定サイトを利用すると便利です。
一括査定サイトを利用するメリット
売却する際には不動産会社に査定を依頼した上で売り出し価格を決定しますが、一括査定サイトを利用して複数社に査定を依頼し、査定額を比較することが大切です。
売却価格の相場が理解できる
一括査定サイトは、インターネットを介して複数社に一括査定を依頼できるというメリットがあります。複数社から提示された査定額を基に売却価格の相場が理解しやすく、より高い査定額を提示してくれる業者を吟味できます。
売却する物件種別の得意な業者を見つけられる
マンションの売買が得意など業者によって得意な物件種別が異なるため、一括査定サイトを利用することで売却したい物件種別に得意な業者を見つけやすくなります。また、大手は広いネットワークで全国各地を網羅しており、地域密着型の業者は特定のエリアに強いことが特徴です。
おすすめの一括査定サイト3選
サイト名 | 利用者数 | 対象エリア | 提携会社数 | 同時依頼数 |
イエウール | 1,000万人 | 全国 | 1,700社 | 6件 |
イエイ | 400万人以上 | 全国 | 1,700社以上 | 6件 |
リビンマッチ | 440万人 | 全国 | 1,400社 | 6件 |
イエウール:全国1,700社以上に対応
地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。
利用者数 | 1,000万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6社 |
取引件数 | 非公開 |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | 株式会社Speee (Speee, Inc.) |
サイト内では一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。
イエイ:お断り代行サービスを提供
大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。
利用者数 | 400万人以上 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 1,000件以上 |
顧客満足度 | 97% |
運営会社 | セカイエ株式会社 |
都心部だけでなく、地方の物件を売却したい人にもおすすめです。また、査定を依頼した不動産会社からの営業連絡を断りたい際に、代わりに断ってくれる「お断り代行」サービスがあるため、営業電話を断りにくい人におすすめです。
なお、依頼先の不動産会社は自分で選べる仕組みとなっています。
リビンマッチ:利用したいサイト第1位
都道府県別に、このサイトに登録している不動産会社の情報をあらかじめ調べることができ、その中から売却査定実績の多い不動産会社を選べることが特徴です。
利用者数 | 440万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,400社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 14万件(年間) |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | リビン・テクノロジーズ株式会社 |
全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。
住宅性能評価書を申請するときの注意点

住宅の売却を有利に進めることができる住宅性能評価書は、申請の際に費用がかかります。また、場合によっては不利に働くケースもあるので注意が必要です。
費用が高い
住宅性能評価書を申請する際には費用がかかり、決して安い金額ではありません。また、以下のように建物の種類によって費用が異なります。
基本料金 | 設計住宅性能評価書 | 建設住宅性能評価書 |
マンション(鉄筋コンクリート造) | 64,800円 | 108,000円 |
戸建て(木造) | 59,400円 | 80,000円 |
マンションの基本料金については、地上階数2以下かつ250m²以下の設計住宅性能評価書が64,800円、建設住宅性能評価書が108,000円と高額で、それ以上になると「階数追加料金」が加算され、階数毎にそれぞれ15,000円かかります。
地下がある場合は、「地階追加料金」として階数毎にそれぞれ20,000円、設計住宅性能評価書において評価項目を追加する場合は、「項目追加料金」として1項目毎に2,000円かかります。
戸建ての基本料金については、2階以下の場合の設計住宅性能評価書が59,400円、建設住宅性能評価書が80,000円かかります。
3階になると設計住宅性能評価書が75,600円、建設住宅性能評価書が95,000円と金額が上がり、地下がある場合はそれぞれ20,000円が加算されます。
なお、設計住宅性能評価書の評価項目を追加する場合は、マンションと同様に「項目追加料金」として2,000円が加算されます。
必ずトラブルが起きないという保障にはならない
住宅性能評価書を取得していると売却後にトラブルが発生した際にも、指定住宅紛争処理機関に紛争処理を申請できるので安心な一方で、必ずトラブルが発生しないという保障にはならないので注意が必要です。
決して安くない費用をかけて住宅性能評価書を取得しても、住宅性能表示制度の評価対象となっている箇所に限って調査が行われるため、住まい全体にトラブルが起きないという保障にはなりません。評価対象外のトラブルに関しては、瑕疵(かし)担保責任に問われる可能性があります。
売却するときは不利になることもある
住宅性能表示制度の基準に沿って建てられた住宅は、高品質で高性能であることが保障されるため、売主と買主双方の安心材料となることでしょう。しかし、1項目でも等級が極端に低い項目がある場合、物件全体のイメージが悪くなります。
また、住宅性能評価を意識して建てられた住宅は建築コストが割高になることから、価格自体も高くなるため売却する際に価格面で不利に働く場合もあります。
特に周辺の類似物件がお得に売り出されている場合、購入希望者がお得な物件に流れる可能性が高いと言えるでしょう。
住宅性能評価書の申請の仕方

住宅性能評価書を取得するには、まずは必要書類を揃えることからスタートします。手続きは郵送とインターネットのどちらかで行えるため、都合の良い方法で申請しましょう。
必要書類を揃える
住宅性能評価書の申請方法については、株式会社住宅性能評価センターの公式サイトに掲載されています。申請に必要な書類は、設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書で異なります。
設計住宅性能評価書
- 設計住宅性能評価申請概要書
- 計住宅性能評価申請書
- 自己評価書
- 委任状
- 設計図書
- 各種計算書等
- 各種裏付け資料
設計図書とは、付近見取り図や配置図、各階床状図などを指しています。各種計算書等とは構造計算書や換気計算書など、各種裏付け資料とは各評価方法基準の裏付けをする認定書などを指しています。申請に必要な書類の入手先や費用については、以下の表で示しています。
必要書類の種類 | 入手先 | 費用 |
設計住宅性能評価申請概要書 | 株式会社住宅性能評価センターの公式サイトからダウンロード | 無料 |
計住宅性能評価申請書 | 同上 | 無料 |
自己評価書 | 同上 | 無料 |
委任状 | 同上 | 無料 |
設計図書 | 各自または設計業者にて保管 | 無料またはコピー代程度 |
各種計算書等 | 各自または設計業者にて保管 | 無料またはコピー代程度 |
各種裏付け資料 | 各自または設計業者にて保管 | 無料またはコピー代程度 |
建設住宅性能評価書
- 建設住宅性能評価申請概要書
- 委任状
- 計住宅性能評価書の写し
- 設計評価申請添付図書写し
- 施行状況報告書
- 建築基準法による確認済証の写し
設計評価申請添付図書写しとは、設計内容説明書や自己評価書などを指しています。申請に必要な書類の入手先や費用については、以下の表で示しています。
必要書類の種類 | 入手先 | 費用 |
建設住宅性能評価申請概要書 | 株式会社住宅性能評価センターの公式サイトからダウンロード | 無料 |
委任状 | 株式会社住宅性能評価センターの公式サイトからダウンロード | 無料 |
計住宅性能評価書の写し | 各自または建設業者にて保管 | 無料またはコピー代程度 |
設計評価申請添付図書写し | 各自または建設業者にて保管 | 無料またはコピー代程度 |
施行状況報告書 | 株式会社住宅性能評価センターの公式サイトからダウンロード | 無料 |
建築基準法による確認済証の写し | 各自または建設業者にて保管 | 無料またはコピー代程度 |
郵送または ネットで申し込む
住宅性能評価書の申請は郵送またはインターネットで受け付けており、メールでの申請は受け付けていません。申請が受け付けられると、引受承諾書が届きます。
その後、申請料の入金が確認されると正式に受理され、審査が開始されます。状況によって期間は異なりますが、申請から住宅性能評価書が交付されるまでの期間は概ね1カ月程度だと言われています。
住宅性能評価書は売却時に必ず有利というわけではない

住宅は築年数に応じて資産価値が下がるため、売却時の築年数によっては高値での売却が期待できない可能性が高いと言えるでしょう。しかし、売却に有利だからといって住宅性能評価書を取得しても、必ずしも有利に働くとは限らないので注意が必要です。
また、住宅性能評価書があれば売主と買主にとって安心材料にはなりますが、決して安くない費用がかかるため、必要性を見極めてから申請するようにしましょう。
また、一括査定サイトについて詳しく知りたい・比較したいという場合は下記の記事を参考にしてください。
参考:【2019年最新】不動産一括査定50サイトをジャンル別に比較!