不動産の売却をしたとき、利益(譲渡所得)に対して税金がかかります。場合によっては利益の約4割の税金を納めないといけない場合もあります。
しかし、不動産売却の前に対策をしていれば、節税をすることができます。税金の知識がなかったために手元に残るお金の少なさにがっかりしてしまうことがないように、不動産売却の税金と節税の知識をつけましょう。
税金の知識が0の方でもわかりやすいように、不動産売却時の節税方法について解説していきます。
不動産売却にかかる5つの税金

はじめに、不動産売却時に支払う税金の種類から確認していきましょう。不動産売却でかかる税金は、所得税、住民税、印紙税、登録免許税、消費税の5種類です。
このうち、売買契約時にかかるのが、登録免許税、印紙税、消費税です。
【売買契約時にかかる税金】
税金の種類 | 概要 | 税率・金額 | 節税可否 |
登録免許税 | 登記にかかる税 | 1件につき1,000円 | × |
印紙税 | 文書(この場合は売買契約書)にかかる税 | 売却額により200円〜60万円 | 可能:売買契約書の原本を、買い主側で作成してもらうことにより折半できる |
消費税 | 仲介手数料や司法書士への報酬にかかる | 8% | × |
一方で、売却が終わってからかかる税金が、所得税と住民税です。所得税は確定申告時、住民税は確定申告を済ませた年の6月ごろに支払うことになります。
<売却後にかかる税金>
税金の種類 | 概要 | 税率・金額 | 節税可否 |
所得税 | 譲渡益がある場合、その利益に課税。確定申告をする。 | 所有期間5年以上:15%
所有期間4年以内:30% |
可能:特例制度あり |
住民税 | 譲渡益がある場合、その利益に課税。 | 所有期間4年以上:5%
所有期間4年以内:9% |
可能:特例制度あり |
上記の表でも確認できるように、不動産売却の利益に対し、所得税と住民税を併せて最大39%程度の税金がかかる場合があります。
せっかく売却益が出たにもかかわらず、約4割の税金がかかってしまうと手元に残るお金は少なくなってしまいます。
もちろん納税自体は義務ですが、控除や特例について知ることにより納める税金を抑えることが可能です。
不動産売却で使える6つの控除で節税

ここからは、不動産売却で使うことが可能な控除を利用した節税の方法を解説します。
紹介する6種類の控除を利用することにより、税金がかかる利益部分=譲渡所得を減らし、所得税や住民税を節税することが可能になります。
5,000万円控除できる公共事業での不動産売却
公共事業のために土地や建物を売却した場合、譲渡所得から5,000万円までの控除を受けることができます。
この場合、売却した土地や建物が固定資産であること、そして買取りの申し出から6カ月以内に売却した場合、控除を受けることが条件となります。
確定申告を行う際には、公共事業のために売却をしたことを証明できる書類を添付する必要があります。具体的には、買取りの申し出を受けたときに受け取った申出証明書や買取の証明書です。これらの書類を公共事業の施工者から受け取っておきましょう。
3,000万円控除できるマイホームの売却
マイホーム(居住用財産)を売却した場合、所有していた期間にかかわらず、譲渡所得から最大3,000万円までの控除を受けることが可能です。
譲渡所得が3,000万円を超えた部分にだけ、税金がかかります。マイホームを売却した際に出た利益が、3,000万円より小さければ税金を払う必要がないということになります。
この特例を受けるためには、自分が現在住んでいるか、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
2,000万円控除できる再開発での土地売却
土地区画整理事業による再開発のために、所有していた土地を売却した場合、2,000万円の控除を受けることができる場合があります。
国や公共団体が宅地の造成のために再開発を行いたい地域に自分の土地があり、その土地を国や公共団体に売却した場合に受けることができる控除です。
この控除を受けるためには、国、地方公共団体、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社などが再開発の事業者であり、買取りを行うことが条件になります。また、売却した土地は宅地の造成に使われることも条件となります。
1,500万円控除できる特定住宅地造成事業での土地売却
建設や宅地の造成など、特定の住宅地造成事業のために土地を売却した場合には、1,500万円の控除を受けることが可能です。
買取りを行うのは地方公共団体や独立行政法人中小企業基盤整備機構などで、買取りの目的は住宅の建設や宅地の造成です。
この特定住宅地造成事業に関する控除の特例の適用件数は、年間3,000件ほどとなっています。
1,000万円控除できる期間限定で取得した土地の売却
土地の売却益に関する控除の中には、「土地等の平成21年・平成22年取得の1,000万円特別控除」というものがあります。
この控除は、土地等を平成21年に取得し平成27年以降に売却した場合と平成22年に取得し平成28年以降に売却した場合に適用されます。
簡単にいえば、平成21年か22年に購入した土地等を4年以上所有して売却した場合に、1,000万円の控除を受けることができるということです。
平成21年はリーマンショックが起こった次の年で、急激に冷え込んだ不動産市場を盛り上げようとして作られたのがこの特例です。
なお、この土地等の中には借地権やマンションの敷地権も含まれています。
800万円控除できる農地の売却
農地を売却した場合には、800万円の控除を受けることができる場合があります。
ただし、すべての農地に適用されるわけではなく、農業委員会の斡旋で、地域の担い手に農地を売却する場合にのみ適用されます。農地が、地域の農業の拡大に貢献する形で譲渡されることを狙った特例です。
出費を活用して不動産売却で節税する4つの方法

出費を活用して課税がかかる譲渡所得の額を減らすことでも、節税をすることができます。ここでは4つの方法を紹介します。
取得費加算で相続税分を利益から引く
取得費加算とは、不動産売却による譲渡益から相続税分を控除してくれる制度です。
この制度を利用すると、実際の譲渡益から相続税を差し引いた部分にだけ課税されることになり、所得税や住民税の節税につながります。
取得費加算に該当するためには、相続開始から3年10カ月以内に相続財産を売却することが条件となります。
損益通算で赤字分を給与所得から引く
不動産売却が赤字になった場合、給与所得などの他の所得と合算することで、税金の節税をすることができます。
例えば、不動産売却を行い最終的な損益が50万円の赤字だった場合、給与所得から50万円を差し引くことが可能です。
給与所得の場合は、毎月銀行口座にお給料が振り込まれる前に税金が徴収されているため、確定申告をすることで、税金が手元に戻ってくることがあります。
なお、すべての不動産売却で損益通算ができるわけではありません。別荘などの生活上必要がない物件の場合などには、損益通算ができませんので注意が必要です。
繰越控除で3年間節税を続ける
不動産売却による赤字額が大きく、先ほど紹介した損益通算しても損失がある場合、繰越控除で3年間節税をすることができます。
損益通算をしても損失が残る場合には、翌年から3年間はその他の所得から繰越控除を続けることが可能です。所得税や住民税の節税につながるので、忘れずに確定申告を行うようにしましょう。
買い替え特例で所得税の節税
自宅を買い換える場合、買い換え特例という制度を使って節税を行うことが可能です。買い替え特例は、売却する家の価格より、新しく購入する家の価格が高い場合、譲渡所得税が課税がされない制度です。
買い替え特例を利用する場合、住居の買い替えであることや、10年以上居住していたこと、住んでいた家が居住用であることなどの条件もあります。
不動産売却の方法を工夫して節税する2つの方法

不動産の売却の方法を工夫するだけでも節税を行うことができます。ここでは、売却するまでの所有期間に気をつけて節税する方法と、売買契約書による印紙税の節約方法を解説します。
不動産を所得してから売却まで5年以上待つ
不動産を所有してから4年経つまで待ってから売却を行うと、支払う所得税と住民税を減らすことができます。以下の表を見てもわかる通り、4年以上所有をしてから売却を行うと、所有期間が4年以内の場合と比べて、税率が約1/2となり、支払うお金も1/2となります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
長期譲渡所得(4年超) | 15.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡所得(4年以内) | 30.630% | 9% | 39.630% |
また、所有期間が5年を超える前からの売却活動は可能で、引き渡しのタイミングを4年を超えたタイミングになるように調整すれば問題ありません。
短期譲渡所得から長期譲渡所得への切り替えば、特別な申請をしなくても税率は自動的に下がる仕組みになっています。
所有する売買契約書をコピーにする
不動産売却を行う際には、必ず売買契約書を作成します。売買契約書は、不動産の売り主側と買い主側で2部作成する必要があります。
売買契約書には印紙を貼り付けることで、印紙税を納めなくてはなりません。売買契約書を2部作成する場合には、それぞれに印紙が必要になりますが、実は売り主側は原本ではなくコピーでも問題ありません。
そのため、事前に買い主や不動産仲介業者と相談しておき、売買契約書を1枚だけ作りコピーを取ることで、印紙税を売り主と買い主で折半することができます。
印紙税は、不動産売却の契約金額によってかかる金額が異なります。売却額が小さければ数百円〜数千円で済みますが、売却額が1,000万円を超えると印紙税も1万円を超えてきます。1億円の場合は10万円と、さらに高額になります。
額が大きくなるほど節税の効果もありますので、売却額が大きい場合には売買契約書をコピーにすることで節税することをおすすめします。
法人の不動産売却でできる3つの節税方法

法人の場合、個人とは違った形で節税を行うことが可能です。ここでは名義で所有している不動産を売却する際の節税方法を紹介します。
役員退職金を使って所得を分散
法人の場合は事業のトータルで利益や損失を計上し、支払う税金が決まる仕組みになっています。不動産売却の利益が出ている場合には、その利益を分散させて法人が支払う税金を引き下げることができます。
例えば、不動産を売却することで利益が出るだろうことが想定できる場合、法人の役員退職時に時期をあわせて売却し、その不動産売却による利益を役員退職金に使うことで課税される利益を減らすことが可能です。
子会社に不動産売却をする
バブル時などに購入したまま所有しており、現時点では資産価値が下がってしまった不動産がある場合、その不動産を利用して節税対策を行うことができます。
こういった資産価値が下がった不動産を子会社へ売却することで、親会社は売却損を計上でき、法人としてのトータルでの利益を下げることで支払う税金を抑えることができます。
さらに、不動産は子会社で保有しているので、引き続き所有を続けることも可能です。
設備投資や新規で不動産の購入
設備投資を行うことや新規の不動産の購入をすることで、トータルの利益を減らすことができます。利益が減ることで、納めなくてはいけない税金も減らすことが可能です。
全ての所得の損益を合算できる法人だからこそできる節税方法の一つです。
節税するために確定申告を忘れない

ここまで不動産売却における15の節税方法を紹介してきました。
節税を行うためには、不動産を売却した翌年の確定申告の時期(2月16日〜3月15日)に、確定申告を忘れずに行いましょう。
普段会社員として働いている方にとっては、確定申告はあまり馴染みのないものかもしれませんが、不動産売却で利益が出た場合には必ず確定申告を行わなくてはなりません。また、売却によって損失が出た場合でも、控除を受けるためには申告行う必要があります。
以下に簡単に確定申告の流れについてまとめています。
【確定申告の流れ】
- 確定申告に必要な書類を準備
- 書類に沿って譲渡所得税額を計算
- 書類に記入を行う
- 確定申告書類の提出
- 納税を行う、または還付を受ける
確定申告に必要な書類は、時期が近づいてから税務署に取りにいくか、税務署のHPからダウンロードをして手に入れることができます。
確定申告書類に沿って譲渡所得税額を計算し、書類に記入を行いましょう。毎年確定申告の時期には、自治体ごとに税理士や税務署職員による無料相談コーナーがあります。
確定申告書類の書き方に悩む場合には、こういった無料相談コーナーで相談してみましょう。
書類が完成したら3月15日までに提出をします。提出した内容に沿って、納税を行います。還付がある場合には還付を受けることになります。
不動産売却で損をしないために複数の査定結果を見比べよう

ここまで節税の観点から不動産売却で損をしない方法を紹介しました。最後に、節税のポイントに加えて知っておいていただきたい、不動産売却の査定時のポイントについても紹介します。
不動産査定時に気をつけたいこと
不動産の売却を決めたら、まず最初に不動産会社へ家の査定を依頼するところから始まります。査定の際に気をつけたいのが、複数の不動産会社に査定を依頼し、必ず結果を見比べることです。
仮に1社だけに査定を依頼した場合、出された査定額が相場よりも高いのか低いのか検討がつきません。相場よりも高い価格で売り出したときには、なかなか買い手がつかない可能性があります。逆に相場よりも低い額で売り出してしまうと、損をしてしまうことがあります。
こういった自体を避けるため、不動産査定は複数の不動産会社に依頼し、必ず結果を見比べて相場を把握するようにしましょう。また、複数の不動産会社を見比べることで、相性の良い不動産会社や、営業力の高い営業マンに出会う可能性をあげることもできます。
複数の査定を受けるためには一括査定サイトがおすすめ
複数の査定を受ける場合、1社1社に個別で依頼をすると、とても手間がかかってしまいます。そのため、査定時には不動産一括査定サイトを利用することがおすすめです。
一括査定サイトを利用すれば、1度の情報入力で5社前後の不動産会社へ一括で査定を依頼することができます。料金は基本的には無料です。さらに、一括査定サイトによっては、売却したい物件に合わせて適切な不動産会社がマッチングされる仕組みになっていますので、不動産会社を探す手間を大幅に省くことができます。
このように、不動産査定の際には便利な一括査定サイトを利用することが売却成功への近道となります。
おすすめの一括査定サイト3選
サイト名 | 利用者数 | 対象エリア | 提携会社数 | 同時依頼数 |
イエウール | 1,000万人 | 全国 | 1,700社 | 6件 |
イエイ | 400万人以上 | 全国 | 1,700社以上 | 6件 |
リビンマッチ | 440万人 | 全国 | 1,400社 | 6件 |
イエウール:全国1,700社以上に対応
地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。
利用者数 | 1,000万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6社 |
取引件数 | 非公開 |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | 株式会社Speee (Speee, Inc.) |
サイト内では一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。
イエイ:お断り代行サービスを提供
大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。
利用者数 | 400万人以上 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 1,000件以上 |
顧客満足度 | 97% |
運営会社 | セカイエ株式会社 |
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全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。
不動産売却前に使える節税方法をチェック

不動産売却における様々な節税の方法を紹介しました。
不動産譲渡所得に関する控除の特例は種類も多く、条件もそれぞれに異なります。また、売却する不動産の所有期間でも納税額が異なります。これらの知識を事前に把握しておかないと、該当していたにもかかわらず見逃してしまうこともあるかもしれません。
不動産売却を考え始めたら、売却活動を行う前から節税方法をチェックし、自分の不動産に該当するものがないか確認しておきましょう。また売却活動を行う際は、一括査定サイトを利用して円滑に進めていきましょう。
また、一括査定サイトについて詳しく知りたい・比較したいという場合は下記の記事を参考にしてください。
参考:【2019年最新】不動産一括査定50サイトをジャンル別に比較!