不動産売却の基礎知識

不動産売買に必要な書類の取得方法とは|期間や実費まで紹介

248 Views

書類準備の重要性とは

不動産売買に必要な書類は、自治体や法務局などの公的機関から取り寄せるもの、そして自分自身が物件を購入する際にしか受け取れないものがあります。中には発行手続きに時間を要する書類や期限付きの書類もあるため、不動産売買を考え始めたときから少しずつ準備しておくと安心です。

ここでは不動産売買の書類について、どこで取得すればいいか、取得時の実費や期間はどのくらいかかるのかについて、売主と買主双方の視点から解説します。注意点も合わせてお伝えするので、ぜひ不動産売買時に活用してください。

一覧で見る不動産売買の必要書類

まず、実際に必要な書類と、その書類がどのタイミングで不動産売買に関わるのかを不動産売却の流れに沿って見ていきます。以下は、一般的な不動産売却契約時に必要とされる書類<>をまとめた表です。そのため、物件によっては表以外の書類が必要な場合もあり、実際に仲介を依頼する業者に必ず確認しましょう。

売却の流れ 必要書類 取得場所 平均期間 実費
査定 一括査定 特になし なし インターネット上ならその場で査定額が出ることも多い 無料であることがほとんど
訪問査定 登記事項証明書(必要に応じて) 法務局 最短10分~最長4日ほど

取得方法により異なる

法務局:1通500円(印紙代)
建物の詳細な図面 購入時に建築会社などから納入される 再発行不可のことも多い、購入時に渡される 購入時に渡されるため無料
売買契約時 共通して必要 身分証明書 各証明書による 各証明書による 各証明書による
印鑑証明書 各区役所区民課または各支所 すでに登録済み:即日発行可能
登録していない場合:1週間以上かかることもあり
市区町村により異なる
住民票(住所変更があった場合) 各区役所区民課または各支所 即日発行可能 1通300円ほど
登記済権利書または登記識別情報通知書 法務局か司法書士(自宅で保管していることが多い) 再発行不可。司法書士に依頼して登記することが必要になる 司法書士による本人確認をした場合:数万~十数万円
固定資産税納税通知書 自宅に通知されるため保管する 再発行不可。紛失した場合は、該当地域の収税課へ連絡して納付書もしくは課税証明書の写しを郵送してもらう 1通:300円(市町村により変わる)
固定資産税評価証明書 各市町村の役所やその出張所 窓口取得か郵送取得(1~2日かかる) 市町村ごと異なり1通350円から400円
状況に応じて必要となる書類 ローン残高証明書、またはローン返済予定表 住宅ローンを利用する場合に必要
建築確認済証および検査済証 一戸建ての売買に必要とされる。紛失時は市町村から証明書を発行してもらえる。
マンション管理規約もしくは使用細則 マンション売却の際は特に必要になる書類、それぞれマンション購入時にもらえるため保管しておくこと
マンションの維持管理費に関わる書類(修繕積立金、管理組合日、町内会費など)
建築図面・平面図図面、設備仕様書
土地測量図・土地境界確認書 登記所・法務局の窓口やインターネットで請求できる 最短30分~3日 窓口で取得:1通450円
オンライン郵送請求:450円
オンライン窓口請求:430円
データのみ取得:365円
確定申告 不動産を売った時 確定申告の用紙(申告書B・申告書第三表(分離課税用)) 法務局もしくは法務局ホームページよりダウンロード 翌年の2月16日から3月15日の間に行えるよう作成 無料
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 無料
売買契約書及び領収書のコピー 売買時にもらえる 売買時にもらえるためその時にコピーして保管する
不動産仲介手数料の領収書のコピー
測量費・登記費用その他売却時の費用の領収書のコピー

このように、基本的に必要とされる書類だけでもかなりの枚数が必要です。また、確定申告書のように、翌年になってから提出をする書類もあります。不動産売買に関する特例を使う場合は、特例の条件に応じて添付書類が変わるため注意が必要です。状況に応じてすぐ提出できるよう、余裕を持って用意をすることが大切です。

重要ポイント<>
1.書類の数は膨大
2.物件ごと違う
3.早めの用意が肝心

手続きに時間を要する必要書類

書類によっては、手続きまでに時間を要する場合もあります。ここでは手続きに時間がかかりやすい書類について解説します。

土地建物登記済証(権利書)または登記識別情報通知書

この2つの書類は同じものであり、発行年代によって名称が変わります。2005年までに登記識別情報としてデータ上で登記情報が管理されるようになったため、2005年以降に販売された物件はすべて、英数字12桁のパスワードで管理されており、この情報を通知したものが登記識別情報通知書と呼ばれます。

登記名義人に対し法務局から広布される書類であり、建物の所有者を示す重要な書類です。所有権の移転登記にも必須で、移転登記をしないと「固定資産税」や「都市計画税」を払い続けることになります。不動産業界では権利書と呼ぶことがまだ一般的なため「権利書を用意してほしい」と言われることもあります。2005年以降に購入した物件であれば、登記識別情報通知書を準備しましょう。

もしも紛失してしまった時の対応

再発行ができないため、紛失してしまった場合は「本人確認情報」<>もしくは「事前通知制度」<>を使って代わりに確認を行うことで対応できます。しかしどちらも費用と時間を要します。

まず「本人確認情報」は、権利証・登記識別情報に代わる書類であり、司法書士によって本人確認が行われ、司法書士の責任で所有者であることを証明するものです。一般的にはこちらの方が信頼度も高く、使用することが多い書類です。司法書士を探して依頼する時間と依頼料(1万円前後)が必要なので事前に把握しておきましょう。

一方「事前通知制度」は、権利証がない状態で登記申請書に権利証を提供できない理由を記載してそのまま登記申請を行い、それを法務局側が本人確認を行うことで本当に本人が不動産を売ろうとしているか確認する、という方法です。こちらも手数料がかかるほか、本人確認のための書類が法務局から郵送されるのを待つ必要があるため、注意しましょう。

納税義務者に送られる固定資産税・都市計画税納税通知書

この2つの書類はどちらも納税者に対して送付されるため、自宅に保管しておけば特に問題はありません。しかし万が一紛失した場合は、再発行してもらうことができない<>ため、代わりとなる固定資産税の課税明細書と同内容の写し<>を、その建物がある市区町村の役場で発行してもらう必要があります。

手数料についてはそれぞれ異なりますが、1所有者ごと1年度毎に手数料がかかります。また本人確認書類や、相続した家なら戸籍などから相続人であると確認できる書類を求められることもあります。遠方に住む場合は郵送による交付申請を行う必要がありますが、手数料分の定額小為替の購入や返信封筒の用意などが必要です。

建築確認済証および検査済証を紛失した際の書類

建築確認済証および検査済証は、一戸建てを売却する際に必要となることがある書類です。どちらも再発行不可の書類ですが「台帳記載事項証明書」を取得することで代用可能です。

台帳記載事項証明書は該当する市区町村の建築指導課の窓口で発行してもらうことができます。ただし建築場所の地名や地番、建築主の氏名などの建物の情報が必要で1通あたり300円ほどの手数料が発生します。メールで申請できる自治体もありますが、受け取りは窓口となるため、時間がない人にとっては手間になる可能性があります。

地積測量図と境界確認書

地積測量図と境界確認書は土地の売却にも必要とされる書類であり、両方とも法務局登記部門(登記所)で取得できます。取得方法は「登記所の窓口でもらう」「オンラインで請求して郵便で受け取る」「オンラインで請求して窓口で受け取る」「データだけを取得する」の4通りです。

しかし測量自体が行われていなかったり、隣接する土地との境界線が曖昧だったりする場合は、測量と境界確認・確定を行う必要があります。数㎡の誤差であっても価格に大きな違いが出るような土地であれば、なおさら地積測量図の取得をした方が良いでしょう。

土地家屋調査士に依頼するのが一般的で、境界確定のための測量の費用は35万円~60万円ほどかかると言われます。実際には査定依頼をしてから測量が終わるまで、最短でも1か月、最長4か月近くかかります。

重要ポイント<>
・代用書類の用意
・時期にも気をつける
・実印は信頼に繋がる

マンション売却時に提出したい書類

一軒家や土地と異なり、マンションは管理会社などによって、売却に関わる独自の取り決めが設定されていることがあります<>。「管理規約」や「管理費・修繕積立金」などの書類については、自分が所持しているものにも1度目を通しましょう。

管理費などの子細については、マンションの管理会社や建築会社へ書類を郵送依頼します。この時、売却に当たって必要な手続きがあるかどうか、電話で問い合わせておくと安心です。また、リフォームや耐震診断報告書などの書類についても提出しておきましょう。

ローン残高が残っている場合は、ローンの残高証明書も用意しておきましょう。マンションは一軒家や土地に比べると測量図などが不要であり、書類も揃えやすいのが特徴です。客観的な情報を提示できる資料があれば、パンフレット以外にも提示すると売却を仲介する不動産会社側も売却活動をしやすくなります。

重要ポイント<>
1.マンション独自の書類
2.用意は早めに
3.客観的な情報源

売主が用意しておくべきものとは

今後売り主になるかもしれないという人が、あらかじめ取得しておくと安心なのは次の2つです。

マイナンバーカード

マイナンバーカードと不動産の関係は、本人確認書類として使える以外にも「住民票の取得」および「印鑑登録証明書の発行」「買主が法人だった場合にマイナンバーの提供を求められる」<>という点があります。マイナンバーカードがあれば、住民票等はコンビニのマルチコピー機で取得できるので、市区町村の窓口へ行く手間が省けます。

発行の手続きは「交付申請書を記入して郵送で申請する」もしくは「申請用のウェブサイトを利用して申請する」<>ことが必要です。また、受け取るときは本人が指定の交付場所へ行く必要がありますが、初めての発行であれば無料です。

1度発行すれば20歳以上の場合はカード発行から10回目の誕生日までの間が有効期限となるため、しばらく所有しておいて損ではありません。マイナンバーの提示を求められた場合、買主へ確認をしつつ慎重に提示しましょう。

実印と印鑑登録証明書

実印や印鑑登録自体は済ませている人が多いかと思いますが、もし実印を持っていなかったり、印鑑登録を済ませていなかったりする場合は、実印を作る手間と印鑑登録の両方に時間がかかります。しかし実際の取引に、実印は必須なのでしょうか。実は売主と買い主双方、取引上は認め印でも構わないと定められています。

売主にとって、実印の方が買主が売主を確認しやすく、また所有権移転登記時に法務局が確認しやすい<>ため、実印を持ち印鑑登録をすることにメリットがあります。また、買主が「ローン契約をする」もしくは「代理人を立てて契約をする」場合には、実印と印鑑登録証明が必要<>です。

買主としても、確実にこの物件を買う、という意志を示す意味があるため、お互いに信頼度が高くなります。実印と印鑑登録は不動産売買を検討するなら早めに手続きを済ませましょう。

実印を購入する場合

実印を持っていない人は、まず購入するところから始めなくてはなりません。苗字が難しい人の場合、3週間近くかかることもあります。ネット上から注文できるお店もありますが、1~2日で届かないことも多いため、余裕を持って依頼しましょう。

印鑑証明を取得するためには

印鑑証明の取得にはまず印鑑登録をする必要があります。印鑑登録は「この印鑑は自分だけのもの」と登録するためのもので、各市区町村役場などで受理してもらえます。手続きは各市区町村によって異なるため、それぞれ確認しましょう。

基本的に成年被後見人を除く15歳以上の住民登録済みの人が対象で、印鑑は1人1個です。流れとしては、次のようになります。

  • 印鑑登録申請書を提出する
  • 登録申請受付後「照会書」が本人の住所宛に郵送される
  • 1カ月以内に「回答書」に必要事項を記入したうえで、登録申請した印鑑と本人確認書類を持って各市区町村の該当窓口へ行く

2度市区町村の窓口へ向かう必要があり、自宅まで照会書が郵送される期間を想定しておく必要があります。平日に窓口へ立ち寄れない場合は、2週間以上かかることもあるでしょう。登録が完了したら、市区町村の窓口か自動交付機、もしくはコンビニで数百円ほどの手数料で印鑑登録証明書を発行できます。

重要ポイント<>
1.マイナンバーカードは便利
2.取引上提示する場合あり
3.印鑑登録は早めに

売買契約成立後に注意したい書類

無事に不動産業者との売買契約を締結して終わりではありません。最重要書類である2つの書類を、しっかりチェックしておきましょう。

売買契約書

売買契約書は、決済や引き渡す際のルールや、トラブルが起きた場合の取り決めについて詳しく記載した書類<>です。売主と買主双方の意思が反映されるため、売主側はこちらの意見がきちんと盛り込まれているか、もらった段階でしっかり確認しましょう。

重要事項説明書

重要事項説明書は、不動産会社側が制作する書類です。不動産における重要事項や売買契約の条件<>も事細かに記されており、買主側に対して宅地建物取引主任者が説明をすることが必須条件です。買主側はこの情報をもとに、物件について詳しく判断します。

したがって、不動産会社側が作った後は、売主側もしっかりと確認することが大切です。こちらが提供した情報が盛り込まれていなかった場合、損をするのは買主側であり、後でトラブルが起きる場合もあります。情報の漏れや記載の間違いがないか、しっかりチェックしましょう。

重要ポイント<>
1.買主あての書類
2.こちらの条件も確認
3.情報不足はトラブルの元

おすすめの一括査定サイト3選

サイト名 利用者数 対象エリア 提携会社数 同時依頼数
イエウール 1,000万人 全国 1,700社 6件
イエイ 400万人以上 全国 1,700社以上 6件
リビンマッチ 440万人 全国 1,400社 6件

イエウール:全国1,700社以上に対応

地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。

利用者数 1,000万人
対象エリア 全国
提携会社数 1,700社
同時依頼数 6社
取引件数 非公開
顧客満足度 98%
運営会社 株式会社Speee (Speee, Inc.)

サイト内では一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。

イエイ:お断り代行サービスを提供

大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。

利用者数 400万人以上
対象エリア 全国
提携会社数 1,700社
同時依頼数 6件
取引件数 1,000件以上
顧客満足度 97%
運営会社 セカイエ株式会社

都心部だけでなく、地方の物件を売却したい人にもおすすめです。また、査定を依頼した不動産会社からの営業連絡を断りたい際に、代わりに断ってくれる「お断り代行」サービスがあるため、営業電話を断りにくい人におすすめです。

なお、依頼先の不動産会社は自分で選べる仕組みとなっています。

リビンマッチ:利用したいサイト第1位

都道府県別に、このサイトに登録している不動産会社の情報をあらかじめ調べることができ、その中から売却査定実績の多い不動産会社を選べることが特徴です。

利用者数 440万人
対象エリア 全国
提携会社数 1,400社
同時依頼数 6件
取引件数 14万件(年間)
顧客満足度 98%
運営会社 リビン・テクノロジーズ株式会社

全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。

書類不足は売却手続きにも影響する

不動産売買に必要な書類は多岐に渡ります。各市区町村の窓口へ行く必要がある書類も多く、手続きが大変だと感じる人も多いかもしれません。しかし書類が不足してしまうと、いざ売却契約を結ぼうとしても手続きに時間がかかり、ベストな売りのタイミングを逃してしまう可能性があります。

書類の中には登記事項証明書のように本人確認不要なものもあるため、家族や友人に協力を仰ぎ、必要書類を揃えていきましょう。