流れを理解して不動産をスムーズに売却する

「不動産の売買契約はどうやって結ぶの?」「不動産会社に任せっぱなしは心配」と思っている人ほど、不動産売却までの流れをチェックしておくことをおすすめします。
なぜなら、流れの基本が分かっていれば「いつ」「何を」「どう質問するか」が自然と見えてくるからです。
ここでは不動産売却における流れを、不動産会社による仲介と不動産会社による買取の2パターンに対して解説します。一括査定サイトの活用方法も、合わせて知っておきましょう。
契約までの流れは事前に確認しておく

不動産売買契約に至るまでの流れを把握しておくと、次の3つのメリットが得られます。
- 不動産売却完了までの計画が立てやすい
- 悪徳業者に騙されにくくなる
- 必要書類の準備に余裕が持てる
たとえば不動産売却が家を引っ越すためのものであれば、次に暮らす家を探したり、引っ越しの用意をしたり、計画的に物事を進める必要があります。契約までの流れが分かっていれば、優先順位をつけて自分のペースで準備ができます。
また不動産会社は売りたい人の目線に立ってくれる会社ばかりではなく、利益をとことん追求し、時には契約者を騙す悪徳業者もいます。
しかし、流れを理解していないと、騙されているのかどうかも判断が付かないため、損をするリスクが高くなります。
不動産を売却するための準備をする

それでは、売却までの流れを準備段階から解説します。
不動産の売却方法を選ぶ
売却方法は、不動産会社に仲介してもらうか、買取してもらうか、2通りの方法から選べます。それぞれどんな特徴やメリットがあるのか、一覧でまとめたので、選ぶときの参考にしてください。
①不動産業者の仲介による売却 | ②不動産業者の直接買取 | |
特徴 | 個人のお客様同士の結び付けを不動産業者がしてくれる売り方 | 不動産業者が買う側となり、不動産を買い取ってくれる売り方 |
メリット | ・価格設定が自分でできる ・買取に比べて高く売れる |
・仲介手数料など売るための諸費用が不要 ・1ヵ月くらいで不動産を現金化できる ・買いに来る個人のお客様の対応などをしなくて済む ・瑕疵担保責任(不都合があったときに売る人が負う責任)がない |
デメリット | ・売れるまで時間がかかる(3~6ヵ月くらい) ・仲介手数料など費用がかかる ・資金計画や売却までの計画が買取に比べて立てにくい |
・売却価格が相場より2~3割は安くなる ・魅力の少ない物件だと断られる可能性がある |
メリットやデメリットの数で見ると、買取の方が良いように思えます。「多少安くても、少しでも早く売りたい」という人には、買取もおすすめの方法です。
一方「時間をかけてもいいから、少しでも高く売りたい」という人は、仲介依頼を検討すると良いでしょう。
不動産の査定を依頼する
不動産売買で大切な手続きの1つが、査定です。不動産に応じて、次の2つの方法が考えられます。
- 不動産業者に依頼する
- 不動産鑑定士に依頼する
まず「不動産業者に依頼する」という方法には、情報のみで判断する机上査定と、自宅に不動産業者が直接赴いて周辺環境を含め査定する訪問査定の2通りがあります。
額は基本同じですが、たとえば近隣にごみ焼却施設があるなど、訪問査定を経て大幅に異なることもあります。
そのため不動産業者に依頼する場合は、数社に査定を依頼して価格や評価されたポイント、減額につながったポイントを比較するのが一般的です。
不動産業者に依頼する場合の査定費用は無料で、数社に依頼しても問題ありません。
特殊な不動産の売買は不動産鑑定士に依頼
不動産鑑定士とは、不動産鑑定評価書という裁判に使える公的な書類制作や、法律に則った査定を提示することができる国家資格です。
しかし言い換えれば、特殊な条件に当てはまらない限り不動産鑑定士に依頼することはまずありません。
自宅として使っている不動産売却であれば、不動産会社の査定だけで十分です。不動産鑑定士の費用は、依頼する鑑定事務所によって異なり、一般的な住宅の相場は数十万円程です。
不動産業者を選ぶ
不動産業者選びは、次のようなメリットがある一括査定サイトが便利です。
- 不動産がある地域に強い会社を自動的にピックアップしてくれる
- 売りたい不動産が自宅から離れている場合もその地域の不動産会社に依頼できる
- 個人情報管理がしっかりしている
- 無料一括査定サイトが決めた水準以上の不動産会社に依頼できる
- 自分で悪徳業者の見極めをする手間が省ける
ただし注意したいのは一括査定サイトで算出される査定額は売却額ではない、ということです。査定額はあくまでも「3か月かけてこの家を売るならこの価格」という、不動産会社側の視点による相場です。
多少、相場より査定額を高くしているというケースもありますが、基本的に自分の目的に合った不動産会社を選ぶ方法として最適です。
一括査定サイトで不動産会社を見つけたら、その中からさらによさそうな会社に訪問査定を依頼しましょう。訪問査定では、どこを見極めていけばよいか、ポイントを表にまとめました。
見極めたいところ | ポイント |
査定額 | ・他の不動産会社に比べて高すぎる時は要注意 ・試しに「もし買取ならいくらで買ってくれますか?」と聞いてみて、元の価格より2~3割低い程度の価格を示してくれるか確認する |
ホームページ | ・会社の雰囲気やモットー、ポリシーなどを確かめる ・サイトの更新が頻繁だと、情報チェックもこまめだと分かりやすい |
担当者 | ・質問への回答が適切で、答えを無理にはぐらかしたり、専門用語を多用したりしない ・こちらの意思を聞いてくれる ・電話やメールの返信が丁寧でスピーディー |
不動産を売却に必要な書類を揃える
下記の表に、必要となる書類を一覧でまとめました。必ず必要となる書類には「〇」を、状況に応じてその不動産では必要となる書類には「△」を、不要な場合は「-」で表記しています。
不動産会社によって異なるほか、有効期限が決まっている書類もあるため、実際の売却時は必ず確認しましょう。
書類名 | 一戸建て | マンション | 土地 | 備考 | |
不動産所有者が持っている書類 | 建築確認済証・検査済証 | 〇 | – | – | |
固定資産税納税通知書・課税明細書 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
設計図書・工事記録書 | △ | – | △ | ||
間取り図 | △ | △ | △ | ||
不動産購入時の契約書・重要事項説明書 | △ | △ | △ | ||
管理規約・使用細則 | △ | 〇 | △ | ||
維持費や管理費が分かる書類 | △ | 〇 | △ | ||
購入時のパンフレット | – | △ | – | ||
ローン残高証明書 | △ | △ | △ | ||
銀行通帳 | △ | △ | △ | 代金支払い方法による | |
法務局で取得する書類 | 登記事項証明書(登記簿謄本と呼ばれることもあり) | 〇 | 〇 | 〇 | 取得まで時間がかかる場合もあり |
登記済権利書・登記識別情報 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
地図(公図) | △ | △ | △ | ||
地積測量図 | △ | – | △ | ||
不動産所有者が取得しに行く書類 | 本人確認書類 | 〇 | 〇 | 〇 | |
実印・印鑑登録証明書 | 〇 | 〇 | 〇 | 発行から3ヵ月以内 | |
住民票・戸籍の附票 | △ | △ | △ | ||
必要に応じて作成する書類 | 付帯設備及び物件状況確認書 | 〇 | 〇 | 〇 | |
耐震診断報告書 | △ | △ | – | あると査定価格にプラスの影響 | |
アスベスト使用報告書 | △ | △ | – | ||
住宅性能評価書 | △ | △ | – |
仲介で不動産売却する時の契約までの流れ

不動産会社を決めるところまでが、準備段階です。その後は、売却まで担当者と共に進めていきます。
媒介契約を決める
不動産会社と結ぶ契約を媒介契約と呼びます。正式に売買の仲介を依頼する契約であり、サービス内容が契約に応じて異なります。
ただし契約は違っても仲介手数料は同じであるため、自分がどんな風に物件を売っていきたいのか、売却方針を踏まえて決めることが大切です。
3種類ある媒介契約の違いを、一覧でまとめました。
契約名 | 他の不動産会社との契約 | 自分で買主を探して取引する | 活動報告の数 | レインズへの登録義務 | 契約期間 |
専属専任媒介 | できない | できない | 1週間に1回以上 | 契約から5日以内 | 3ヵ月 |
専任媒介 | できない | できる | 2週間に1回以上 | 契約から7日以内 | 3ヵ月 |
一般媒介 | できる | できる | 法令上の義務なし | 法令上の義務なし | 3ヵ月以内とされる |
レインズとは、全国の不動産会社が情報を登録して閲覧しあえるようにする、国土交通大臣が指定したサービスのことです。
一般媒介契約でも、依頼すれば掲示してもらえます。宣伝とはまた違う形で不動産情報を広められるため、買主探しにも役立つポイントです。
査定額から売り出し価格を決定
不動産の売却に関わる価格には、以下の3種類があります。
- 客観的に決められる「査定価格」
- 実際にマンションを売り出す時の「売り出し価格」
- 最終的に合意によって決まる「成約価格」
「査定価格」をつけるのは不動産会社ですが、最終的に売り出し価格を決めるのは売主であるあなた自身です。
売り出し価格の決め方
売り出し価格は、査定価格より少し高めに設定することが多いです。通常物を売るときは安く見せるために、お得感のある8や9という数字を用いて、安く見せかけます。
しかし不動産売却の場合は値引き感を出すために、あえて高く見える価格を提案します。
この時、これ以上は下げない、という最低価格も決めましょう。また査定価格以外にも、同じような間取りの不動産が売り出されていたら、それも参考になります。
価格が決定したら、売却活動が開始になるため、タイミングも見計らって決めるのがおすすめです。
購入希望者の内覧
マンションや一戸建てなど、家を売る場合は「内覧」と言って購入希望者が実際に見学にやってきます。自分が購入希望者になった気持ちで、できるだけ良い印象をもってもらえるように準備をしておきましょう。
- 掃除:玄関や水回りがポイント
- 部屋:靴や服はタンスに片づけると部屋が広く見える
- 臭い:タバコやお香など特別な香りは消臭
- 庭:ゴミを片付け、雑草を取り除く
マンションの場合も、バルコニーが汚いとマイナスポイントです。髪の毛は意外と残りやすいため、注意して払っておきましょう。また照明を明るいものに替えるだけでも、部屋の印象が良くなります。
掃除しきれなかったらプロを検討
たとえば煙草で壁一面がヤニ汚れにまみれていたり、どうしても綺麗にならない水回りがあった場合に、ハウスクリーニングを検討しましょう。引っ越しなど出費も多い状況で、無理にハウスクリーニングを依頼する必要はありません。
買主に対して重要事項説明書を説明
金額を含め条件の合意に至ったら、不動産会社側が買主に重要事項説明書を用いて条件を説明します。重要事項説明書に記入される内容は、主に次の3つです。
- 取引する物件の法的な取り決め
- 代金や契約解除など取引条件
- その他販売に係る事項
説明が行われる前に、売主側として重要事項説明書を確認します。たとえばどんな時に契約解除が行われるのか、また瑕疵担保責任についてどう扱われるのか、買主が融資を受けられなかったらどうなるのかなど、分からない点が無いように確認しておきましょう。
他にも周辺環境や物件に対し、心理的に告知すべき事項や、付帯設備など買主側に売主が説明しておくべき事項が全て含まれているかチェックします。
売買契約を締結
売買契約を締結したら、代金の決済が行われます。大きな金額がやり取りされるため、銀行の一室などを借りることがほとんどです。あわせて所有権移転手続きといって、売主であるあなたから買主へ不動産の所有権を引き渡します。
なお住宅ローンがある場合は、解約や抵当権の抹消手続が先行となるため、司法書士に依頼するのが一般的です。法的な手続きが完了したら、買主へ鍵を渡す前に、電気代や水道代など公共料金、固定資産税など税金の精算も済ませます。
買主がローンを利用する場合は、審査が終わるまでの間1ヵ月ほど期間が開きますが、手続きや引っ越しなどでバタバタしがちです。不動産会社の担当者と、いつごろまでに何を終わらせておくべきか、契約の締結時に確認しておくと良いでしょう。
買取で不動産売却する時の契約までの流れ

できるだけ早く売りたい人におすすめの買取は、事前準備から決済完了までおよそ1ヵ月程度です。かかる期間が短いということは、それだけ引っ越しや家財整理、費用や書類の用意、不動産会社の決定など、事前準備をスピーディーに進める必要があります。
不動産会社の決定までは、仲介とほとんど同じです。買取査定を依頼するところから、仲介と流れが変わってきます。大まかな流れは、以下の通りです。
- 買取価格の査定依頼
- 買取価格の提示
- 売却スケジュールや条件の打ち合わせ
- 売買契約を締結
- 残金決済
スケジュールや条件の打ち合わせは、具体的に言うと「家財道具の処分費を請け負ってくれるか」「設備をそのままにしても良いのか」「代金をいつ決済するか」といった内容を決めます。
また買取価格に納得がいかない場合は、査定を依頼した他の会社にも問い合わせた上で決めましょう。
また瑕疵担保責任といって、不動産に不備があった場合の責務を売主側が問わることはありませんが、雨漏りのことなど家の不備を黙っているのはトラブルの元です。状況はできるだけ正確に伝えましょう。
おすすめの一括査定サイト3選
サイト名 | 利用者数 | 対象エリア | 提携会社数 | 同時依頼数 |
イエウール | 1,000万人 | 全国 | 1,700社 | 6件 |
イエイ | 400万人以上 | 全国 | 1,700社以上 | 6件 |
リビンマッチ | 440万人 | 全国 | 1,400社 | 6件 |
イエウール:全国1,700社以上に対応
地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。
利用者数 | 1,000万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6社 |
取引件数 | 非公開 |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | 株式会社Speee (Speee, Inc.) |
サイト内では一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。
イエイ:お断り代行サービスを提供
大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。
利用者数 | 400万人以上 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 1,000件以上 |
顧客満足度 | 97% |
運営会社 | セカイエ株式会社 |
都心部だけでなく、地方の物件を売却したい人にもおすすめです。また、査定を依頼した不動産会社からの営業連絡を断りたい際に、代わりに断ってくれる「お断り代行」サービスがあるため、営業電話を断りにくい人におすすめです。
なお、依頼先の不動産会社は自分で選べる仕組みとなっています。
リビンマッチ:利用したいサイト第1位
都道府県別に、このサイトに登録している不動産会社の情報をあらかじめ調べることができ、その中から売却査定実績の多い不動産会社を選べることが特徴です。
利用者数 | 440万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,400社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 14万件(年間) |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | リビン・テクノロジーズ株式会社 |
全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。
流れを把握しておけば不動産売却も余裕を持って進められる

不動産売却は、1ヵ月から1年と期間はまちまちですが、短い間に様々な人とたくさんのやり取りを行います。流れを把握しておけば、書類の用意や連絡などが余裕を持って進められ、スムーズです。
1つとして同じ条件の不動産が無いからこそ、その不動産に合う売り方を探していきましょう。
仲介を依頼する場合も、買取を依頼する場合も、まずは不動産の相場を知ることから始まります。一括査定サイトは、査定額だけ聞いて今後の対応を検討する、匿名で依頼するといった使い方も可能です。
まずは一括査定を依頼をして実際の不動産の売却価格の相場を知りながら、売却を進めていきましょう。
また、一括査定サイトについて詳しく知りたい・比較したいという場合は下記の記事を参考にしてください。
参考:【2019年最新】不動産一括査定50サイトをジャンル別に比較!