不動産売却の基礎知識

長期譲渡所得について理解しよう|計算方法や相続時の対処方法も

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長期譲渡で支払う税金は得をする

所有している不動産を売却したときに、購入したときよりも売却価格が高く利益が出た場合は、譲渡所得税が課税されます。企業勤めで今まで源泉徴収をされていた人は、確定申告をして納税することになります。

この譲渡所得税は不動産の所有期間で税率が変わり、長期譲渡は短期譲渡に比べて2倍程度差があります。長期譲渡の仕組みを知らないと、所有期間の境目で不動産売却をして損をしてしまう可能性があります。そこでこの記事では、長期譲渡の意味や税率、所有期間の決まりについて紹介します。節税のため、不動産売却の参考にしてください。

長期譲渡となる所有期間と税率

不動産売却で支払う税金を把握するため、長期譲渡とはどんなことを意味するのか、所有期間の決まりや税率を、短期譲渡と比較しながら紹介していきます。

長期譲渡の所有期間は5年が境目

長期譲渡とは、不動産を売却した年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超える場合のことをいいます。ポイントは譲渡した年の1月1日現在で何年経過しているのかです。実際の所有期間が5年を超えていても、1月1日現在で5年を超えていなければ、長期譲渡所得にはなりません。

短期譲渡は5年以内での不動産売却で、投資用不動産の売却を繰り返してると、5年以内の短期譲渡となりやすいです。ただし自身の所有期間が5年以内でも、相続した不動産の場合は所有期間も引き継ぐので、長期譲渡となるケースがあります。相続した不動産を売却する場合は注意してください。

長期と短期の譲渡による税率の違い

譲渡所得税は3つの税金からなりたっていて、内訳は

譲渡所得税=所得税+住民税+復興特別所得税

となっています。復興特別所得税は、2037年12月31日まで課税される東日本大震災のための復興財源です。所有期間によって長期と短期の税率は、

所得税 住民税 復興特別所得税 税率の合計
長期譲渡 15% 5% 所得税の2.1% 20.315%
短期譲渡 30% 9% 所得税の2.1% 39.63%

復興特別所得税だけは、所有期間に関わらず所得税の2.1%が税率となっています。

不動産は年月が経つほど、売却価格が下がりやすい傾向です。しかし長期譲渡になるまでの期間が短ければ、税率が2倍程度違うので、売却を待つのも選択肢となります。

長期譲渡で不動産売却の利益にかかる税金を計算

それでは長期譲渡と短期譲渡の不動産売却で、いくら税金に違いが出るのでしょうか?実際にいくら税金がかかるのかを計算してみます。税金の計算は、税金がかかる不動産売却の利益(課税譲渡所得金額)から求めていきます。

課税譲渡所得金額の計算方法

課税譲渡所得金額は以下の式で計算されます。

課税譲渡所得金額=譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額

課税譲渡所得金額は、上記の計算式で算出できます。計算式の「取得費」とは、不動産の購入代金や仲介手数料、登記費用といった、不動産を購入するためにかかった費用のことです。この中には、リフォーム代金も含めることができます。

「譲渡費用」とは、売却するために掛かった諸費用のことです。例えば、仲介手数料・登記費用・印紙代などが該当します。「特別控除額」とは、一定の条件を満たしたときに適用となる特例のことです。この適用となる特例の控除金額によっては、課税譲渡所得金額が大幅に削減することができます。

長期譲渡での課税譲渡所得金額をシミュレーション

長期譲渡と短期譲渡の違いを分かりやすくするため、特別控除なしで以下の条件でシミュレーションをします。

<不動産を売却した時の条件>

  • 6年前に購入した戸建のマイホームを売却
  • 取得費:3,000万円
  • 譲渡価格:周辺の開発が進み5,000万円で売却
  • 譲渡費用:200万円

課税譲渡所得金額=5,000万円-(3,000万円+200万円)=1,800万円

所得税=1,800万円×15%=270万円

住民税=1,800万円×5%=90万円

復興特別所得税=270万円×2.1%=5万6,700円

譲渡所得税=365万6,700円

もし上記の条件で購入時期だけ違い、短期譲渡になっていたら、

譲渡所得税=713万3,400円

となり譲渡所得税で347万6,700円もの差がついてしまいます。

 

マイホームの売却なら4つの節税対策

長期譲渡の方が短期譲渡に比べて得とは言っても、何百万円も税金の支払いがあると、手元に残る現金は少なくなってしまいます。そこで、不動産売却をするなら特別控除や軽減税率の制度を使って、節税対策ができます。マイホームの売却向けの4つの節税対策を紹介していきます。

3,000万円の特別控除の特例

3,000万円の特別控除、またはマイホーム控除などと呼ばれています。マイホームを売却した際の、譲渡所得から3,000万円までを控除することができます。この特例は、所有期間の定めはありません。長期譲渡所得でも短期譲渡所得でも適用となります。特例を受けるには、下記の条件を満たす必要があります。

  • 自分が住んでいた家の売却
  • 以前住んでいたが、住まなくなってから3年を経過する日が属する12月31までに売却する
  • 売った年、その前年及び前々年に該当する特例を受けていない
  • 売り手と買い手が親子や夫婦など特別な関係でない

また、相続などで取得した不動産では、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」にて、譲渡所得額から3,000万円までの控除を受けることができます。この特例は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの売却限定となり、一定の要件を満たす必要があります。

所有期間が10年越えで軽減税率の特例

軽減税率の特例では、住んでいたマイホームを売却した際、売却した年の1月1日現在で、所有期間が10年を超えている場合に適用することができます。3,000万円の特別控除と併用することができる特例なので、譲渡所得から3,000万円を引いた後の、課税譲渡所得金額6,000万円までに対して軽減された税率を乗じます。

長期譲渡所得金額 所得税 住民税
6,000万円までの部分 10% 4%
6,000万円を超える部分 15% 5%

買換えの特例で税金の支払いを先送り

マイホームの買い替えを行う際に利用できる特例となり、正式には「特定の居住用財産の買換えの特例」といいます。条件を満たした場合、譲渡益の課税を繰り延べることができる特例です。つまり、買換えた新しい家を売却するときまで、課税されないということです。免除になるわけではないので、注意してください。

この特例は、平成31年12月31日までの期間に売却する必要があります。また、売却した年の前年から翌年の3年間の間にマイホームを購入することが条件となります。買換えの特例は、3,000万円の特例控除や軽減税率の特例を併用することができないので、どの特例を適用させるか良く検討しましょう。その他の条件は下記の通りです。

  • 旧住居の所有期間が1月1日現在で10年を超えていること
  • 居住期間が通算で10年以上であること
  • 譲渡価額が1億円以下であること
  • 新住居は、土地面積500㎡以下、かつ建物の床面積50㎡以上であること

譲渡所得がマイナスなら損益通算

不動産を売却して譲渡所得がプラスになるとは限りません。取得費より安い売却になったら、譲渡所得はマイナスとなってしまいます。この場合は譲渡所得税は0円ですが、企業勤めの人は給与から税金を引かれます。損益通算の制度を使えば、譲渡所得のマイナス分を給与と合算して税金を計算するから、制度を使わない場合と比べて所得を低く見積もれ、所得税や住民税を少なくできます。

この制度は長期譲渡をして、譲渡所得がマイナスになった場合に適用できます。さらにマイナス分が1年で相殺できなければ、売却した年の翌年から3年間なら、繰り越して相殺することができます。

相続する不動産の売却は早期に手続き

不動産売却はマイホームだけとは限りません。相続した不動産を現金化するための売却だってあります。相続する不動産の売却を検討しているなら、早期に手続きをしないと損をしてしまいます。ここでは、相続する不動産の売却時に気を付けたいポイントを解説していきます。

相続登記をしないと不動産売却ができない

相続した不動産では、所有者の名義が違います。その名義を変更するために行う登記が相続登記です。一般的には、相続で取得したら相続登記を行うのが良いとされてますが、変更する期限や罰則がないこと、手続きが面倒などという理由から名義変更しないままにしてしまっているケースも少なくありません。

不動産の売却には、名義変更が必須となります。相続登記をしないで放置しておいたことで、相続人の気持ちが変わって、名義変更の同意が得られなくなってしまったり、必要な書類が入手できなくなってしまったりすることもあります。デメリットも多いので早めに相続登記は行っておきましょう。

特別控除を使うなら相続の3年以内に売却

相続した家を売却して利益があった場合は、もちろん譲渡所得税が課税されます。しかし、相続してから3年後の12月31日までであれば、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」を受けることができます。そうすることで、譲渡所得から3,000万円までの控除を受けることができ、お得となります。

また、この特例は現時点では、平成31年12月31日までの売却限定となっているため、相続した家の売却を検討しているなら、早めに行動するようにしましょう。

長期譲渡で利益を出すなら一括査定を活用

不動産売却では特別控除の金額以内なら、所有期間が長期でも短期でも、税額支払う税金は0円となります。しかし長期譲渡だと、建物ありなら劣化が進み地方の土地だと需要の低下で、最終的に手元に残るお金は、短期譲渡より少なくなってしまいます。

そこで長期譲渡で高く売却したいのなら、一括査定を使うことをおすすめします。一括査定なら、複数の不動産会社に手軽に査定依頼を出せて、相場に合った価格で売却してくれる所が見つかります。優良な不動産会社が厳選されているのもメリットで、売却前に税金がどうなるのかのアドバイスをもらうこともできるでしょう。

おすすめの一括査定サイト3選

サイト名 利用者数 対象エリア 提携会社数 同時依頼数
イエウール 1,000万人 全国 1,700社 6件
イエイ 400万人以上 全国 1,700社以上 6件
リビンマッチ 440万人 全国 1,400社 6件

イエウール:全国1,700社以上に対応

地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。

利用者数 1,000万人
対象エリア 全国
提携会社数 1,700社
同時依頼数 6社
取引件数 非公開
顧客満足度 98%
運営会社 株式会社Speee (Speee, Inc.)

サイト内では一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。

イエイ:お断り代行サービスを提供

大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。

利用者数 400万人以上
対象エリア 全国
提携会社数 1,700社
同時依頼数 6件
取引件数 1,000件以上
顧客満足度 97%
運営会社 セカイエ株式会社

都心部だけでなく、地方の物件を売却したい人にもおすすめです。また、査定を依頼した不動産会社からの営業連絡を断りたい際に、代わりに断ってくれる「お断り代行」サービスがあるため、営業電話を断りにくい人におすすめです。

なお、依頼先の不動産会社は自分で選べる仕組みとなっています。

リビンマッチ:利用したいサイト第1位

都道府県別に、このサイトに登録している不動産会社の情報をあらかじめ調べることができ、その中から売却査定実績の多い不動産会社を選べることが特徴です。

利用者数 440万人
対象エリア 全国
提携会社数 1,400社
同時依頼数 6件
取引件数 14万件(年間)
顧客満足度 98%
運営会社 リビン・テクノロジーズ株式会社

全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。

長期譲渡は短期譲渡より税率がお得になる

不動産の所有期間によって、譲渡所得税率が違います。さらに長期譲渡所得の中でも、5年超えか10年越えなのかでも税率が変わります。短期譲渡所得よりも長期譲渡所得のほうが、税率が安くお得となります。もし、マイホームの売却を検討していて、5年未満の場合は売却時期を再度検討してみましょう。

長期譲渡だと税率が安くなると言っても、多くのマイホームの売却では、3,000万円の特別控除に該当します。3,000万円以上での売却にならない限り、税金は大きく変わりません。不動産会社選びにも気を配り、手元に残るお金の多さで売却方法を検討してください。

また、一括査定サイトについて詳しく知りたい・比較したいという場合は下記の記事を参考にしてください。

参考:【2019年最新】不動産一括査定50サイトをジャンル別に比較!