不動産売却は「買取」と「仲介」の2種類
不動産を売却するには、「買取」と「仲介」の2つの方法があります。「買取」と「仲介」どちらを選ぶかによって、売却までの期間や金額に差が出てきます。
まず「買取」とは、不動産会社が不動産を直接買い取るので、すぐに不動産を現金化しやすいメリットがあります。そのため、近所や周りに知られずに短期間で不動産を売却することができるほか、買主の資金調達や転居のスケジュールなどの予定が立てやすくなるでしょう。
また、「買取」は、瑕疵担保責任が免除されます。瑕疵担保責任とは、雨漏り、シロアリ被害、家が傾いているなどのいわゆる住宅の欠陥のことで、不動産を売却した後、瑕疵があることが判明した場合、売主が補修の対応をしたり、場合によっては契約を解除されたりすることがあります。宅建業者である不動産会社の「買取」は、こうした瑕疵担保責任が免除されます。
しかしながら、不動産会社の買取価格は、不動産相場よりも約1~3割ほど安くなるデメリットがあります。不動産会社が直接の取引により、買取におけるトラブルなどのリスクをすべて不動産会社が背負うことになるので、その分のリスクを考慮して買取価格を設定するため、その分は安くなってしまう仕組みです。
一方、「仲介」とは不動産会社に市場での売却の仲介を依頼することです。不動産会社と媒介契約を結ぶことで、一般のお客様に販売するための広告活動、内見の対応、契約に至るまでの煩雑な手続きを売主に代わって不動産会社が行ってくれることがメリットです。そして、「仲介」の場合には、売却価格は不動産相場並みで売れる可能性がありますが、いつ売却できるかは、立地条件や景気などにも左右されるため、長期で販売を見込む必要があります。
こうしたことに加え、「仲介」で不動産を売却した場合には、仲介手数料として不動産会社に報酬を支払うことになります。仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、例えば3,000万円の販売物件であれば3,000万円×3%+6万円+消費税で103.68万円もの手数料を支払うような計算となります。
「買取」と「仲介」ではそれぞれ異なった特徴がありますが、時間が掛かっても高く売りたいのであれば「仲介」を選び、早く売却して現金化したいのであれは「買取」にすることがおすすめです。
本記事では、この後、「買取」を検討されている方に向けて、「買取」に趣を置いた説明で進めていきます。

買取は「即時買取」と「買取保障」の2種類
不動産会社が買い取る場合、「即時買取」と「買取保障」付きの買取があります。2種類の買取方法があるので、その違いをしっかりと確認しておきましょう。
不動産会社による「即時買取」
「即時買取」は言葉のとおり不動産会社が買主となり、不動産をすぐに買い取ってくれることです。即時買取の場合には不動産会社は購入の意思がある状態なので、不動産をすぐにお金に変えることができます。
売主の立場としても購入希望者を探す手間が省け、短期間で不動産の売却が可能です。すぐにでも不動産を売却したい場合には「即時買取」を行ってくれる不動産業者や買取業者を探すのがベストです。
「買取保証」付きの不動産会社による買取
「買取保障」とは、いったん不動産会社に市場での売却を仲介してもらいます。そして、一定の仲介期間中に売却が上手くいかなかった場合は、不動産会社が仲介していた不動産を買い取る保証をしてくれる契約のことです。
この方法は、売却期間に余裕がある場合に選択するのが賢明です。即時買取とは異なり、市場ですぐに買い手がつけばお金になりますが、そうではない場合には不動産会社が設定した仲介期間が終了するのを待たなければなりません。
また、「買取保障」では即時買取に比べて、不動産を高額で売却できる可能性があります。仲介を依頼した直後の不動産売却価格は、不動産会社が査定した金額よりも高額に設定されています。そのため、仲介直後に売れた場合は売却金額が高くなるのです。しかし、売れずに保証期間が過ぎていくと、買取保障額は低額になっていくことも頭に入れておきましょう。
「買取」と「仲介」に適した条件
次に「買取」と「仲介」を比較し、どのような人に向いていてどのような特徴があるのか、それぞれに適した条件を挙げてみます。
「買取」に適した条件
- すぐに現金化したい(即時買取)
- 現金化したい時期が確定している(買取保証)
- 仲介手数料などの経費を支払う余力が手元にない
- 他の人に売却していることを知られたくない
- 築年数の古い物件を売却する
「仲介」に適した条件
- 売却金額はできるだけ高く売りたい
- 売却時期は長期になっても構わない
- 築浅物件を売却する
- 立地の良い不動産を売却する
スムーズで後悔しない不動産買取にするには
不動産をスムーズに買取してもらうためには、事前準備が必要です。この事前準備を怠ると、売却時期が遅くなったり、売却価格で損をしてしまいます。そして、業者からの信頼を失うことにも繋がりかねません。
その信頼は、買取価格に反映されることもあります。そのような後悔をしないためにも、不動産会社に頼りきりになるのではなく、不動産売買の流れをしっかりと把握して、自ら行動するようにしなければなりません。
不動産買取の流れ
1.必要な書類を事前に準備しておく
不動産の売却にはたくさんの書類が必要となります。それらの書類は「本人に関する書類」と「不動産に関する書類」の2種類です。スムーズに売却を済ませるためにも、売却が決まったあとに書類を用意するのではなく、売却を始める段階で必要書類を確認し、準備しておきましょう。
本人に関する書類で用意が必要なもの
- 身分証明書(運転免許証やパスポートなど。)
- 印鑑証明書(引き渡し時点で発行から3ヶ月以内のもの)
- 実印
- 住民票(引き渡し時点で発行から3ヶ月以内のもの)
- 銀行口座書類
- ローン残高証明書
注意したいのが、不動産に共有者がいる場合です。その場合には、身分証明書、印鑑証明書、実印、住民票の4つの書類には関しては、不動産の共有者全員分の書類がそろっている必要があります。
不動産に関する書類で用意が必要なもの
不動産に関して必ず揃えなければならない書類は、2つあります。
- 権利書もしくは登録識別情報
- 固定資産税納付書もしくは固定資産税評価証明書
権利書は、不動産の登記についての証明書です。平成17年3月7日以降は権利書ではなく、「登録識別情報」という名称になっています。権利書もしくは登録識別情報のどちらかの書類を準備しましょう。
また、固定資産税納付書が見つからない場合は、固定資産税評価証明書を取得しておきましょう。市区町村の役所の窓口で依頼する、もしくは郵送で依頼することで取得できます。
そして、必ず用意しなければならない書類ではないのですが、用意しておきたい書類もあります。これらの書類を用意しておくことで、物件の詳細が分かりやすくなります。物件の詳細が分かることによって、買取がスムーズにいく場合があります。余裕があるならば、これらの書類も準備をしておきましょう。
- 売買契約書
- 建築確認通知書
- 耐震診断報告書
- 建築設計図
- 図面
- 管理規約書(マンションの場合)
- 購入時のパンフレット(マンションの場合)
2.買取価格の査定を依頼する
上記の書類を不動産会社に提出した後、不動産会社に査定を依頼し、買取価格の提示をしてもらいましょう。
3.物件引渡の際の条件確認をする
査定額が提示された後、不動産会社と物件引渡の際の条件確認などを行います。具体的な事例としては、下記のような内容について予め打ち合わせをします。
- 家財道具の処分費の有無
- 空調設備の放置による請求の有無
- 売却代金の決済時期
4.契約を締結する
不動産会社の買取価格に承諾した場合には、売買契約を締結します。この時点で、疑問点や不明点は全て解消し、不動産会社との行き違いや認識の相違がないように心掛けましょう。
5.残金決済と物件引渡を完了する
残金決済とは、買主(「買取」する不動産会社)より、買取金額から手付金を引いた金額を受取るということです。売主は、その費用を使ってローンの繰上返済に充てることができます。また、残金の受け渡しのほか、売主は買主に対して、所有権移転に必要な権利証や印鑑証明書などを渡します。
これに加え、引渡日を迎えるまでには、抵当権抹消の手続き、公共企業や管理会社への引っ越し手続き、引っ越しの準備などを済ませなければなりません。
最後に、司法書士による本人・書類確認や、売買代金の受領、各種清算金の受領、住宅ローンの完済と抵当権抹消手続きなどを完了し、鍵や関係書類の引渡を行って、不動産買取に関する取引は全て終了となります。
買取にかかる諸経費のシミュレーション
不動産会社で買取する場合、どのような諸経費が必要になるのか、その内訳やかかる費用について、具体例を交えながら紹介します。
主な諸経費の内訳
- 売買契約書に貼付する印紙代
- 抵当権抹消登記費用(※融資を受けた場合)
- 譲渡所得税(売却利益が出た場合)等
例えば、購入したマンションが3,000万円で買取価格が2,000万円の場合、印紙代1万円、抵当権抹消登記費用15万円、譲渡所得税0円となり、合計16万円ほど諸経費がかかる計算になります。
買取してもらう不動産会社の選定方法
不動産会社によっては、不動産買取額に差がでてくることがあります。それを知らずに1社だけに頼って売却を進めると、せっかく高額で売却できるはずだった不動産で損をする可能性がでてきます。複数の不動産会社に査定を依頼するなど、自ら行動して信頼できる不動産会社を選ぶようにしましょう。
不動産一括査定サイトを利用する
不動産の評価額を、複数業者に一括で依頼できるのが「不動産一括査定サイト」です。このようなサイトで評価を依頼すると、各社は評価額を出してきます。評価額や対応などは、各社によって様子が異なります。それらを比較して、信頼できそうな会社を選びましょう。
複数の買取業者の査定を比較する
単独の不動産会社に買取を依頼していては、不動産の買取相場を知ることはできません。できるだけ高額で不動産を買い取ってもらうためにも、複数の買取業者に査定をしてもらいましょう。買取業者によって、査定のポイントが異なってきます。その査定の違いによっては買取額に差が出るので、自分が満足できる価格で買い取ってくれる業者を選択することが大切です。

おすすめの一括査定サイト3選
サイト名 | 利用者数 | 対象エリア | 提携会社数 | 同時依頼数 |
イエウール | 1,000万人 | 全国 | 1,700社 | 6件 |
イエイ | 400万人以上 | 全国 | 1,700社以上 | 6件 |
リビンマッチ | 440万人 | 全国 | 1,400社 | 6件 |
イエウール:全国1,700社以上に対応
地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。
利用者数 | 1,000万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6社 |
取引件数 | 非公開 |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | 株式会社Speee (Speee, Inc.) |
サイト内では一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。
イエイ:お断り代行サービスを提供
大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。
利用者数 | 400万人以上 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 1,000件以上 |
顧客満足度 | 97% |
運営会社 | セカイエ株式会社 |
都心部だけでなく、地方の物件を売却したい人にもおすすめです。また、査定を依頼した不動産会社からの営業連絡を断りたい際に、代わりに断ってくれる「お断り代行」サービスがあるため、営業電話を断りにくい人におすすめです。
なお、依頼先の不動産会社は自分で選べる仕組みとなっています。
リビンマッチ:利用したいサイト第1位
都道府県別に、このサイトに登録している不動産会社の情報をあらかじめ調べることができ、その中から売却査定実績の多い不動産会社を選べることが特徴です。
利用者数 | 440万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,400社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 14万件(年間) |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | リビン・テクノロジーズ株式会社 |
全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。

不動産買取業者のおすすめ3社
不動産の買取業者のおすすめは、「カチタス」「大京穴吹不動産」「ハウスドゥ」の3社です。これらの会社は豊富な買取実績があるのが特徴です。また、それぞれの不動産買取業者によって特徴が異なるので、不動産売却の目的に合わせて、どの会社を利用するのか検討すると良いでしょう。
「カチタス」
「カチタス」の大きな特徴は、金銭に関する行動が迅速な点です。査定価格の提示まで最短3日、現金での決済も最短で3週間という短いサイクルで不動産の買取を行ってくれます。そして、売却後に発生した家のトラブルに関しても、基本的には「カチタス」が引き受けてくれるので、安心して売却を行うことができます。
また、リフォームを行うことを前提としているので、築年数が古くても対応してくれる可能性があります。築年数が経ちすぎて他社で買取を拒否された場合でも相談してみると、良い答えが返ってくるかもしれません。
「大京穴吹不動産」
「大京穴吹不動産」は、一戸建てだけではなく、マンションの買取と販売にも力を入れている会社です。全国各地に営業所を持ち、グループネットワークを活かした売却力がある会社でもあります。
買取サービスのポイントとして、条件によっては最短で一週間で買い取ってもらえる場合や家屋内にある家具を処理せずとも買い取ってくれる場合があります。
また、即時買取と保証付買取を選ぶことができます。どちらの方法で売却するかを悩んでいる場合には、まずは相談してみると良いでしょう。
「ハウスドゥ」
「ハウスドゥ」では、不動産の査定をAI(人工知能)が行います。AIが不動産推定相場価格データを活用することで、店舗のないエリアでも不動産の査定結果の精度を向上させることをおこなっています。
そして、ハウスドゥでは、ハウスリースバックを行っています。ハウスリースバックとは、所有している不動産をハウスドゥが買い取り、売却後はリース契約をしてそのまま同じ不動産に住み続けられるシステムです。自宅を売却した場合、立ち退かなければなりません。しかし、ハウスリースバックを利用すれば、そのままの環境で生活ができます。もちろん、資金がたまれば買い戻すこともできます。
またハウスドゥは、底地と借地権の買取も強いのが魅力です。底地と借地権がバラバラの状態だと売買には不向きな状態です。しかし、ハウスドゥでは、バラバラの状態で所有されている底地と借地権も買取に応じてくれる可能性があります。底地と借地権で困っている場合は、ハウスドゥに相談してみるのも一つの手です。
そして番外になりますが、所有している不動産が、更地にした後に新築の建物が建てられない「再建築不可」のような物件は、日翔・レジデンシャル株式会社が買取可能です。同社は、旗竿地や未接道など、売買が極めて困難な不動産を積極的に買取してくれるので、このような不動産会社があるのは救いになるでしょう。
不動産会社を見極めるポイント
不動産の買取は、単独の不動産会社に任せるのではなく、複数の業者に査定などを依頼しましょう。その中で、査定額や対応を検討し、信頼できる不動産会社や買取業者を選ぶことが重要です。
そのためにも自分で事前に準備できる書類は準備をし、不動産の相場の価格を調べておくことが必要になります。安く買い叩かれないためにも、対等な関係で不動産の売買をできる状態にしておきましょう。
具体的には、不動産会社と打ち合わせする際、不動産会社が売手の要望を聞いてくれそうか、査定の根拠がしっかりと説明されるか、買取実績がどのくらいあるのかなどを確認することが大切です。
特に不動産会社としての買取実績は気になるところですが、不動産業者が宅地建物取引業の免許を受けたときに宅建業免許番号が割り振りされるので、その番号を確認するのを忘れないでください。もしも免許番号がないようなら無許可で営業している業者となるので注意が必要です。
また、免許権者の免許番号は、東京都知事(8)第0001号、国土交通大臣(1)第0001号などと記載されており、名刺等にも免許番号が書れているほか、不動産会社の事務所に免許番号が確認でき、カッコ内の数字は更新回数になりますので、その更新回数から歴史のある会社であるかどうか簡単に見極めることができます。
更に詳しく調べたいなら、国土交通省の各地方整備局や、各都道府県の担当課において、免許更新前の取引件数や金額、業者の商号、代表者氏名、役員氏名、事務所所在地、行政処分履歴に至るまで、売却したい物件の地域に登録されている不動産会社の情報を閲覧することが可能です。
また、一括査定サイトについて詳しく知りたい・比較したいという場合は下記の記事を参考にしてください。
参考:【2019年最新】不動産一括査定50サイトをジャンル別に比較!