不動産売却の基礎知識

不動産売却で住民税はいくら支払う?計算方法や節税対策を解説

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不動産売却にかかる住民税を事前に把握

不動産売却をした時、売却できた価格や物件の状態によって、支払う住民税は変わってきます。いくらかかるのかを不動産売却前に把握しておかないと、売却で得たお金を使ってしまった時、あとから住民税の支払いを求められ、家計が苦しくなってしまいます。

そこでこの記事では、不動産売却で住民税が発生する条件や計算方法、節税をする方法について解説をします。初めての不動産売却でも、住民税の支払いで損をしないため、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも住民税とは

住民税とは、地方自治体が行政サービスを行うための資金源で、企業勤めなら給与から天引きさる税金の一つです。税率は一部の都市を除いて一律10%となっています。

住民税の税率は所得に対してかけられ、所得がなければ住民税の支払いはありません。不動産売却においては利益がでた場合に限り、売却条件によって決められた住民税を支払うことになります。

不動産売却の住民税を計算する方法

それでは不動産売却で、実際にいくら住民税を支払うことになるのかの計算方法を紹介してきます。住民税は確定申告の時に、所得税と一緒に計算されるため、一緒に計算できるようになりましょう。

まず課税譲渡所得金額を割り出す

住民税のを計算するためには、不動産売却でいくら利益が出たのかを割り出すことから始めます。利益は「譲渡所得」と呼ばれ、つぎの式で求めます。

譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)

取得費については、相続などで詳細が不明な場合があります。そのような場合は譲渡収入金額の5%が取得費として使われます。

譲渡所得の内、住民税の課税対象となる金額は「課税譲渡所得金額」と呼ばれ、

課税譲渡所得金額=譲渡所得-特別控除

支払う税額=譲渡所得金額×税率(住民税や所得税)

で計算されます。この課税譲渡所得金額に税率がかけられ、支払う住民税が決まります。特別控除は後で詳しく紹介しますが、条件さえ満たせば課税譲渡所得金額を圧縮でき、支払う住民税を抑えることができます。

項目 意味
譲渡収入金額 不動産を売却できた金額
取得費 売却する不動産の取得にかかった購入費や手数料の合計

建物なら売却時に劣化を加味して価格が決まる

譲渡費用 不動産を売却するためにかかった手数料などの費用

住民税の税率を調べる

住民税の税率は不動産の所有期間によって変わります。5年を目安に税率が大きく変わり、以下のようになっています。

不動産の所有期間 住民税 所得税 合計税率
5年以下 9% 30% 39%
5年超 5% 15% 20%

なぜこうした所有期間による税率の違いがあるのかというと、バブル時代に行われていた土地転売を排除するためです。短い期間で土地転売する人に対してより重く課税していたルールが今も存在しているのです。

5年以下なのか、5年以上なのかの判断は、1月1日を基準にしています。不動産を持ってから1月1日からどれぐらい経ったのかをチェックしてみましょう。所有期間を間違えてしまうと短期になり、より高い税金を支払うリスクがあります。所有期間が短ければ税率は高く、長ければ低くなると認識しておいてください。

2039年までは、さらに復興特別所得税が加わることにも注意してください。支払う所得税の2.1%が復興特別所得税になります。

不動産売却での住民税をシミュレーション

それでは具体的に住民税がどのくらいかかるのかを、条件を設定してシミュレーションしてみましょう。住民税の支払いがいかに大金なのかを知るため、特別控除は無しで計算をします。

不動産売却できた時の状況

  • 親の自宅を相続(所有)をして7年経過
  • その自宅を2,000万円で売却
  • 仲介手数料や測量などに100万円かかった

この場合は、つぎのように条件設定されます。

  • 相続をして7年経過した家が、2,000万円で売却できた
  • 相続した家で取得費が不明なので、譲渡収入金額の5%で計算
  • 仲介手数料や測量などで、譲渡費用が100万円かかった
  • 所有してから7年経過しているので、住民税の税率は5%

計算式はつぎのようになります。

譲渡所得=2,000万円-(100万円+100万円)=1,800万円

住民税=1,800万円×5%=90万円

さらに税率が15%の所得税や、復興特別所得税も支払うことになります。節税対策をしないと不動産売却が成功しても、手元に残るお金は激減してしまいます。

4つの方法で不動産売却の住民税を節税

住民税は何も節税対策をしていないと、所得税と合わせて100万円単位で支払うことになります。住民税を節税する方法は4つあるので、該当するものは全て実行するようにしましょう。

売却する不動産の取得費を正確に把握

不動産の購入価格や購入の手続きの費用がわかっていれば、建物の場合、

取得費=建物の購入価格-減価償却費+購入の手続きの費用

減価償却費=建物の購入価格×0.9×償却率×経過年数

で計算されます。償却率は建物の構造によって変わり

建物の構造 償却率
木造 0.031
軽量鉄骨 0.025
鉄筋コンクリート造 0.015

となっています。上記で紹介したシミュレーションの条件に追加として

  • 建物の購入価格は3,000万円
  • 建物は木造
  • 経過年数は20年
  • 購入の手続き費用150万円

とわかっていると、

取得費=3,000万円-(3,000万円×0.9×0.031×20)+150万円=1,476万円

取得費が不明で譲渡収入金額の5%で計算するより、譲渡所得を圧縮できます。取得費がわかる書類は、売却を計画する前に探しだしておきましょう。

不動産売却で特別控除を適用させる

不動産売却には、売却状況によって6つの特別控除が用意されています。

  1. 公共事業などのために不動産の売却で5,000万円
  2. マイホームの売却で3,000万円
  3. 再開発などでの土地の売却で2,000万円
  4. 建物や宅地の造成のため土地を売却して1,500万円
  5. 平成21年~平成22年に取得した土地の売却で1,000万円
  6. 地域の担い手に農地の売却で800万円

該当する控除が使えれば、課税譲渡所得金額が抑えられるので、住民税の節税に繋がります。これらの特別控除を利用するためには、条件を満たした上で確定申告をする必要があります。

居住用物件の所有期間で軽減措置

5年を超える所有期間の住民税の変更とは別に、住民税の軽減措置が用意されています。適用条件は10年を超えて所有している居住用物件の売却で、住民税は以下のように軽減されます。

特別控除利用後の課税譲渡所得金額 住民税 所得税
6,000万円以下の金額 4% 10.21%
6,000万円を超える金額 5% 15.315%

高額でマイホームが売却できた場合、3,000万円の特別控除と併用できるので、適用できれば住民税を一段と節税できます。

不動産売却で利益なしでも損益通算で節税

不動産売却では、損失が出た場合でも確定申告で住民税を節税することができます。損益通算という制度で、不動産売却で出た損失を給与所得と合算して、税金を計算するのです。

所得税は給与から既に天引きされています。確定申告をすることによって還付され、住民税は次の年度分が安くなってくれます。損失が出たから確定申告は必要ないと思っていると、思わぬところで損をしてしまいます。

不動産売却での所得税と住民税の違いとは

所得税と住民税は税率が異なるだけではなく、確定申告の必要の有無にも違いがあります。同じタイミングで確定申告することになりますが、所得税の申告を行えば住民税も申告済みとなります。こうした所得税と住民税の違いについて詳しく解説していきます。

確定申告の必要性

確定申告は所得税のみ行い、住民税は不要です。しかし所得から住民税は計算されます。所得税の確定申告を行うことで、住民税の申告も一緒に行っていることと同等になります。こうした申告方法になっていますので、住民税の確定申告を怠ることはないと言えます。

確定申告は不動産を売却した次の年の2月中旬から3月中旬までに行う決まりがあります。申告書に必要事項を記入し提出すれば、確定申告完了です。税務署に直接届けるのではなく、郵送も対応可能です。昨今では電子申告もありますので時間の取れない人でも、申告ができるような仕組みになっています。また申告すべき人がしなかったら、無申告課税や延滞税がかかりますので注意が必要です。

不動産売却では利益があってもなくても、確定申告をしないと住民税で損をしてしまいます。確定申告の締め切り直前で、申告が必要なことに気づいても、焦って計算間違いをしたり書類不足で締め切りを過ぎたりします。不動産売却前から準備をしていきましょう。

納付するタイミングが異なる

住民税の支払いは確定申告後です。住民税納付書が送られ原則的には、6月、8月、10月、翌年1月に分けて納付することになります。給与から引かれる方法を選択することも可能です。所得税は確定申告をした時に納付となります。不動産を売却したお金を残しておかないと、税金の支払いが滞るリスクがあるので注意してください。

住民税節税の近道は一括査定で不動産会社探し

不動産売却では住民税以外にもさまざまな税金や費用がかかり、自力で正確に売却利益を把握するのは簡単ではありません。しかし優良な不動産会社を見つけられれば、売却プラン作成時に住民税などの費用を見積りをしてもらえ、さらに詳しい税金のアドバイスが欲しければ、税理士などを紹介してもらえます。

近場の不動産会社巡りをして、優良かどうかを判断するのは、仕事をしている人にとっては大変な苦労です。そこで一括査定を使えば、あらかじめ優良な不動産会社が厳選されており、知らなかった地元の不動産会社も候補に挙がります。売却価格の相場も一括査定でわかるので、高額売却と住民税の節税を一度にすることができるでしょう。

おすすめの一括査定サイト3選

サイト名 利用者数 対象エリア 提携会社数 同時依頼数
イエウール 1,000万人 全国 1,700社 6件
イエイ 400万人以上 全国 1,700社以上 6件
リビンマッチ 440万人 全国 1,400社 6件

イエウール:全国1,700社以上に対応

地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。

利用者数 1,000万人
対象エリア 全国
提携会社数 1,700社
同時依頼数 6社
取引件数 非公開
顧客満足度 98%
運営会社 株式会社Speee (Speee, Inc.)

サイト内では一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。

イエイ:お断り代行サービスを提供

大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。

利用者数 400万人以上
対象エリア 全国
提携会社数 1,700社
同時依頼数 6件
取引件数 1,000件以上
顧客満足度 97%
運営会社 セカイエ株式会社

都心部だけでなく、地方の物件を売却したい人にもおすすめです。また、査定を依頼した不動産会社からの営業連絡を断りたい際に、代わりに断ってくれる「お断り代行」サービスがあるため、営業電話を断りにくい人におすすめです。

なお、依頼先の不動産会社は自分で選べる仕組みとなっています。

リビンマッチ:利用したいサイト第1位

都道府県別に、このサイトに登録している不動産会社の情報をあらかじめ調べることができ、その中から売却査定実績の多い不動産会社を選べることが特徴です。

利用者数 440万人
対象エリア 全国
提携会社数 1,400社
同時依頼数 6件
取引件数 14万件(年間)
顧客満足度 98%
運営会社 リビン・テクノロジーズ株式会社

全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。

不動産売却前に住民税を計算しておこう

不動産を売却した際に住民税がかかるのは、原則利益が出た時だけです。そして所得税もかかります。税率は不動産の所有期間によって決定し、長ければ支払う税金は安くなります。しかし確定申告をして、特別控除や10年以上の所有による軽減税率を使えば、取得費よりよほど高額で売却しないと、住民税を支払うことはないでしょう。

初めての不動産売却では、基本を知っていても計算ミスや制度の適用忘れで、住民税を余計に支払う可能性があります。そのためにも、信頼できる不動産会社をパートナーとして、適切な助言を受けることが大切です。不動産売却は一括査定を使って、優良な不動産会社を見つけることから始めましょう。

また、一括査定サイトについて詳しく知りたい・比較したいという場合は下記の記事を参考にしてください。

参考:【2019年最新】不動産一括査定50サイトをジャンル別に比較!