住み替えでの売却損をカバーできるものは?
古い不動産物件を売却して新しい物件への住み替えを行う場合、首尾よく売却益を出すことができればよいのですが、取引の結果売却損が出てしまった場合は、各種控除制度を利用し、損失をできるかぎり少なく申告することによって所得税率を引き下げ、課税負担を軽減することができます。
不動産取引における売却損を上手にコントロールして、所得税、住民税を節約できる控除システム活用のテクニックについて、詳しく見ていきましょう。
不動産の売却損で控除される税金
不動産取引では、「物件を売ればそれで終わり」というわけではありません。取引の結果生じた売却益や売却損に対しては所得税や住民税が課せられ、その翌年の確定申告によってきちんと手続きし、納付をすませる必要があります。
もちろん、取引における損益を正しく申告し、所定の税額をきっちりと納めることは重要ですが、基礎控除などの制度を活用することによって、所得税および住民税を軽減することができ、本来であれば支払う必要のない税金を大幅に節約することができます。
基礎控除や繰越控除など、税法の仕組みをきちんと理解したうえで、不動産取引における売却損を正しく申告するテクニックを身につけましょう。
損益通算で所得税と住民税が控除される
不動産取引を行う上で必ず覚えておくべきキーワードが「損益通算」です。不動産取引などで生じた損益を単年度で申告すると、どうしても損失が大きくなってしまい、結果として課税対象となる所得部分がかさんでしまいます。
損益通算とは、「不動産取引で生じた売却損益を複数年度にわたって処理する」ための制度で、取引が生じた年度を含めて最長4年間にわたり損失を課税所得から差し引き、最終的な課税範囲を最小限にとどめることができます。
譲渡損失の繰越控除で最長4年の控除
不動産取引で生じた売却損は譲渡損失ともよばれ、一定の要件を満たしていれば繰越控除によって最長4年間(売却年度を含む)にわたって損失を合算し、課税所得と相殺することで納付する税額を減らすことができます。
たとえば、初年度の譲渡損失が500万円で、課税所得が2000万円の場合、最初の繰越控除では、(2000万円-500万円=1500万円)となり、次年度以降は、
- 1500万円-500万円=1000万円
- 1000万円-500万円=500万円
- 500万円-500万円=0
となり、不動産の売却から3年後には課税所得を完全に相殺することができます。ただし、実際には上記の計算式に物件の取得費、減価償却費などが含まれることになり、控除のための要件もやや複雑になります。
買い替えでの売却損で税金が控除される
売却損の基礎控除が適用されるケースが多いのは、不動産物件の買い替えです。物件を買い替えた時に申請できる所得税および住民税の基本的な仕組みについて具体的に見ていきましょう。
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
住宅ローンがまだ残っている不動産物件を売却し、なおかつ取引の結果譲渡損失が出た場合、翌年の確定申告において「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用されます。
特例の主要な摘要条件
「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。「本来であれば特例が認められるはずなのに制度を知らなかったせいで損をした」ということのないように、繰越控除の具体的な摘要条件について把握しておきましょう。
所有期間が5年を超えるマイホームである
繰越控除の特例が適用されるのは、マイホームを所有してから5年以上が経過している場合です。物件を所有する、というのは取引のあとに所有権が移転されている状態を表し、なおかつマイホーム限定であるため、たとえば別荘や事業用オフィスなどには原則として適用されません。
合計所得金額が3千万円以内である
繰越控除の特例には、厳格な所得制限が設けられています。具体的には、トータルの所得金額が3000万円を超えるケースでは繰越控除を受けることができず、譲渡損失を相殺することができません。
ただし、所得控除などによってあらかじめ所得を差し引いておくことにより、3000万円以上の所得があったとしても繰越控除の特例が認められる場合があります。
マイホーム特例の摘要に該当しないこと
繰越控除以外にも、マイホーム所有者には5つの特例が認められており、これらのうちいずれかひとつでも該当する場合は、繰越控除を受けることができません。マイホーム特例は以下の通りです。
取得する新居の条件に該当すること
不動産物件を売却したからといって、すべての物件に対して繰越控除の特例が認められるわけではありません。たとえば、居住用ではない別荘やオフィス用の土地などは特例の対象外となり、損益通算を行うこともできません。
敷地面積が500平米以内まで
繰越控除の特例を受けるためには、土地および不動産物件の総面積が500平米以内でなくてはなりません。物件の売却時点で土地の厳密な面積が不明な場合は、あらためて土地の測量を行い、実測面積を記録する必要があります。
新居の住宅ローンが10年以上であること
新居に住宅ローンが設定されていたとしても、トータルの返済期間が10年以内である場合には、繰越控除の特例は認められません。ローンの借り換えなどを行った場合でも、ローン契約時から10年を超えている場合には特例が適用されることになります。
取得した年の翌年末までに居住すること
居住用不動産であっても、取得年度の次の年までに入居が確認されなければ、繰越控除の特例の要件には含まれません。居住の要件としては、世帯主や家族の構成員のうちいずれかが生活の拠点として毎日、またはそれに近い頻度で居住していることが必要となります。
買い替えでない場合の譲渡損失の繰越控除
買い替え以外にも、不動産物件の取引においては譲渡損失の繰越控除が認められる場合があります。買い替えの場合とどのような点で異なるのでしょうか。
所有期間や所得の要件は一緒
買い替え時もそうでない場合も、所有期間と所得に関する繰越控除の要件は変わりません。ただ、買い替えでない場合には申告上の所得が違ってくる場合がありますので、所得計算のポイントについては事前にチェックしておきましょう。
ローン残高から売却価格を引いた額が限度額
繰越控除において何よりも重視されるのは、売却する不動産物件の純粋な資産価値です。この場合、物件の資産価値は、
(売却価格―ローン残高)
という計算式で導出することができ、この式で得られた額が繰越控除の限度額となります。ローン残高が売却価格を上回るアンダーローンの場合には繰越控除を受けることができません。
特例の適用手続きは確定申告で
繰越控除の申請手続きは確定申告で行うことになります。繰越控除の詳しい申請方法と申請期限、必要書類についてお伝えしていきます。
売却した翌年と繰越控除を受ける年に申告
確定申告による申請が必要になるのは、不動産物件を売却した年と繰越控除が発生する年です。申告期限は所得税や住民税などと同じく毎年2月16日~3月15日の間ですので、不動産物件を売却した方は必ずチェックしておきましょう。
確定申告に必要な添付書類と事項
繰越控除の申請にあたっては、確定申告の際にいくつかの必要書類をそろえ、窓口に提出する必要があります。書類のうち、一部は所定のフォーマットがなく、自分自身で書式を作成するものもありますので、事前によく確認しておきましょう。
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不動産は売却損でも控除される価値を持つ
不動産物件の取引で売却損が出た際には、繰越控除の申請要件をチェックし、課税所得をできるかぎり少なくおさえられる方法を考える必要があります。物件の種別や居住期間など、申請にあたっては細かい例外要件が定められていますので、申請要件にあてはまるかどうかを事前に確認することが大切です。
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