不動産売却の基礎知識

任意売却の基礎知識や方法が知りたい!メリットや注意点も徹底解説!

163 Views

この記事では、不動産売却をする際の「任意売却」の基礎知識や方法(やり方)を徹底解説しています。

その他にも、「任意売却」のメリットや注意点も紹介しているので、きっと参考になるハズです。それでは見ていきましょう!

そもそも「任意売却」って何?

任意売却」とは、様々な理由で住宅ローン等の借入金が返済できなくなった時に、その不動産を売却しても住宅ローンが残ってしまう不動産を、金融機関の合意を得て売却する方法です。

家を購入する時には、住宅ローンを組む方が多いでしょう。住宅ローンを組んだ時は支払えると考えていても、突然の病気やリストラなど、さまざまな原因でローンが支払えなくなることは、誰にでも起こりうることですね。

もし住宅ローンや借入金の返済が滞ると、債権者である金融機関などは担保権を実行し債権を回収します。例えば、住宅ローンが支払えなくなったときは、金融機関は不動産を担保とする抵当権を実行し、残りの住宅ローンを回収しようとします。この場合、債権者が裁判所に申し立てを行い、対象となる不動産を裁判所が売却する「競売」になります。

競売にかけられてしまうと、相場より極めて低い金額で、大事にしてきた家が人の手に渡ることになります。また、金融会社のブラックリストに名前が載ることもあり、信用度が落ちてしまいます。

任意売却はそんな競売を回避するための1つの方法と言えます。

任意売却のメリット

任意売却や競売を調べると『競売での取引は市場価格よりも下がる』と出てきますが、一概にそうとは言い切れません。詳しくは任意売却のメリットをみていきましょう。

  1. 市場相場に近い価格で売却できる
  2. 持出し金が0円
  3. 事情を知られずに売却できる
  4. 売却した家に住み続けることも可能
  5. 残債は分割による返済ができる
  6. 引越し費用を負担してもらえる可能性もある

①市場相場に近い価格で売却できる

任意売却は不動産会社の仲介によって物件を売却するので、不動産ポータルサイトや、不動産会社のホームページなどで多くの人に情報を流すことができます。また、売却価格の希望価格を市場価格に近い金額で設定し、購入者を探してくれるので、大幅に価格が下がる可能性が低いと言えます。

以前は、競売の落札価格は市場価格より2~3割下回ると言われていましたが、正確には最低の売却価格の基準となる不動産の評価額が、市場価格より下回る可能性が高いということです。実際の落札価格は、地域や不動産の状態によっては、市場価格を大幅に上回ることもあることを覚えておきましょう。

②持出し金が0円

住宅ローンを滞納して、家を手放さなければならない方のほとんどは手持ちの現金がないでしょう。しかし、任意売却の場合、通常の不動産売却でかかる諸経費(一般的に売買価格の3~5%前後)を持ち出す必要がありません

これらの諸経費は、不動産を売却した代金から支払うことが認められています。仮に、通常の不動産売買のように諸経費を売主(任意売却でいう債務者)が支払うとしてしまうと、そこで売却手続きはストップしてしまうためです。

③事情を知られずに売却できる

競売にかかると、不動産の番地が新聞やインターネットなどで公表されます。その情報を一般の方で見る方は少ないと考えられますが、仮に見た場合、近隣の人であれば気づく人もいるでしょう。

ここで、裁判所では瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)を負ってくれないため、競売業者である不動産会社や投資家の人が近所に聞き込みを行うこともあります。しかし任意売却であれば通常の売買と同様に扱われるため、そのような心配はなく事情を知られずに売却をすることができます。

④売却した家に住み続けることも可能

任意売却は「売却」するので通常、住み続けることはできませんが、一定の条件を満たすことで住み続けることができます

1つ目が「リースバック」という方法です。リースバックとは、第三者に売却した家を賃貸として賃料を支払うことで住み続けることができる方法です。ただし、賃貸契約なので、一定の安定した収入があることが条件となります。また、事前に特約を交わすことで数年後に買い戻すこともできます。

2つ目が「買戻し」です。親族や知人に不動産を買い取ってもらい、今後のローン返済をその相手に支払う方法です。買い戻すまでの期間は相場程度の賃料を支払い、収入の回復の目処がたったら、改めて買い戻すのが通常です。

⑤残債は分割による返済ができる

通常の中古物件の売買でも、売却価格はローンの返済額より下回ることが多いのが実情です。それは任意売却にも言えることで、不動産売却後も住宅ローンの残債が残る可能性は高いと言えます。

ただし、通常の中古物件の売買であれば、残債は一括で債権者に支払わなければいけませんが、任意売却では異なります。

任意売却の場合、債権者と協議し、債務者が無理のない範囲内で支払う金額を決めることができます。一般的に月々5,000円~30,000円程度の返済が多いようです。当たり前ですが、金額を分割する回数分、支払い期間は長くなるので注意しましょう。

⑥引越し費用を負担してもらえる可能性がある

任意売却も通常の不動産売買と同様に、買主が見つかったら引っ越しをして家を明け渡さなければいけません。しかし、任意売却を考える人は手持ちの現金がない人が多く、引っ越し費用自体が無いケースは少なくありません。

その場合、債権者との交渉により債権者の善意で引っ越し費用を売却代金から融通してもらえる場合があります。金額の相場は10万円~30万円程度です。ただし、わずかでも貯金があったり、車などのお金に換金できる資産がある場合は引っ越し代金の費用を認めてもらえない可能性があります。

任意売却の必要条件ついて

「任意売却したいのでお願いします。」と、債務者の一存で決めることはできません。任意売却をするためにはいくつかの条件を満たしていることが必要になります。詳しく見ていきましょう。

  1. 債権者の合意
  2. 担保である不動産が差し押さえられていない
  3. 一定量の売却期間(猶予)がある
  4. 市場価値がある
  5. 共有者の同意
  6. 連帯保証人の同意
  7. 管理費・修繕積立金の滞納がない

①債権者の合意

債権者から「任意売却してもいいよ」という合意が得られていることが必要です。また、売却価格は債権者の納得した金額でなければ売却はできません。

②担保である不動産が差し押さえられていない

住宅ローンを滞納する人の中には、税金を滞納している人も多くいます。その場合、不動産が役所等に差し押さえられている場合があり、その場合は売却することはできません。

③一定量の売却期間(猶予)がある

任意売却は市場で買主を探し、契約やローン審査など通常の売買と同程度の時間がかかります。「来月競売にかかります」など、時間に余裕がない場合、依頼しても断られるケースがほとんどです。

④市場価値がある

市場に出しても買主が見つからなければ、任意売却する意味がありません。地域や、築年数などが重要なポイントになります。

⑤共有者の同意

不動産が共有となっている場合、共有者が納得しなければ任意売却をすることはできません。

⑥連帯保証人の同意

住宅ローンや、借入金に連帯保証人がいる場合、その相手の同意も必要になります。

⑦管理費・修繕積立金の滞納がない

一定額以上の滞納がないことが条件となります。

任意売却ができる時期や期間について

任意売却は、したいときにいつでもできるわけではなく、できる時期や期間が決まっています。詳しく見ていきましょう。

  1. リスケジュールでも滞納してしまう場合
  2. 競売の開札期日の前日まで
  3. 任意売却の期限は金融機関による

①リスケジュールでも滞納してしまう場合

任意売却は住宅ローンを滞納しているときに初めて選択できます。住宅ローンを滞納せずに売るのは通常の中古物件の売買になります。また、滞納したからといってすぐに任意売却することはできません。

一般的に、住宅ローンを滞納した場合、初めに「リスケジュール」と言われる返済条件の変更を金融機関と行います。その変更内容でも滞納してしまう場合、任意売却の相談をすることができます。

リスケジュールは、ブラックリストに乗らない団体信用生命保険を利用することもできるので、失業や業績悪化、病気など一時的に返済が滞ったが、原因の解消が見込まれるときに有効です。変更内容は交渉次第ですが一般的には返済額の減額などが行われます。

②競売の開札期日の前日まで

不動産の競売が決まると、「担保不動産競売開始決定の通知」が届きます。このまま何もせずに待つと早くて4か月程度で競売により、不動産を引き渡さなければいけません。

任意売却はこの通知を受け取った後でも可能です。一般的に、競売の開札期日の前日まではできますが、その日までに任意売却の引き渡しまで完了させる必要があります。

債権者との交渉時間や買主を探し出すのに最低でも1ヶ月は必要になるので、現実的には開札期日の3カ月前には動き出さないと売却することは難しいと言えるでしょう。また、債権者によっては競売の手続きに入った不動産については、任意売却を一切認めないこともあるので注意が必要です。

③任意売却の期限は金融機関による

任意売却に応じる期限は金融機関などの債務者によります。大抵の場合、任意売却として市場に出すことができる期間は3カ月から6カ月と考えられています。この期間の中で、債務者と交渉した売却価格で売買取引が成立すれば、任意売却の成立となります。

ちなみに、任意売却では売却価格が極めて重要になります。というのも、高すぎては購入者が現れない可能性があり、価格が低すぎると債務者が納得しない場合があるためです。

また、売却価格が安いということは、住宅ローンや借入金の残債が多くなるため、債務者である自分にとっても不利になることを覚えておきましょう。

任意売却の流れ

任意売却をする場合、どのように進めていくのか大まかな流れを見ていきましょう。

  1. 任意売却専門業者へ相談する
  2. 物件査定とスケジュールの打ち合わせ
  3. 専任媒介契約の締結する
  4. 販売を開始し買主を決定
  5. 債権者の同意を得る
  6. 不動産引渡しおよび代金決済

①任意売却専門業者へ相談する

任意売却を相談する時には、任意売却の実績がある業者に依頼しましょう。不動産の売却は不動産会社に依頼するイメージですが、不動産会社には、それぞれ得意な分野があります。賃貸業が得意な業者や土地の開発を行う業者までさまざまです。任意売却を依頼するのであれば、任意売却を得意とする業者を選ぶことが大切です。

また、相談する時には不動産の種別や所在地、借入先である債務者の情報、現時点でのローンや借入金の残高、どれくらいの期間滞納しているか、リスケジュールを行ったか、現在の生活状況や任意売却後の住まいの目処など、可能な限り詳細に報告しましょう。詳細に伝えることで、業者が任意売却をスムーズに進めることができ、適切な対応をすることができます。

ここで注意したいのが、情報は正確に伝えることです。情報を隠したり自分にとって有利になるようにウソの情報を伝えることは、依頼する業者の信用を失うことになります。それだけではなく、任意売却自体を進めることができなくなる可能性が高まるので、絶対に止めましょう。

②物件査定とスケジュールの打ち合わせ

任意売却を依頼する業者が決まったら、物件調査と査定をしてもらいましょう。

ここで「物件査定なら一般の売買を行っている不動産会社でもできるのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、任意売却はスピードが大事であり、通常より査定を甘くして、出来る限り短時間で売却できる価格にしなければいけません

とは言っても、査定価格は近隣の相場を基準として、高過ぎず安過ぎず同程度になることが多いようです。査定が終わったら、売却の売却の方法や今後のスケジュールを立てていきます。

③専任媒介契約の締結する

スケジュールが決まったら、次に業者と媒介契約を締結します。

媒介契約には「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」と3種類ありますが、任意売却の場合専任媒介契約が必要になります。理由としては、債権者との交渉を行わなければならず、その窓口を一本化するためです。また、一般媒介では登録が自由なレインズも専任媒介では義務となるので市場へ情報が流れやすく買主が見つかりやすいというメリットがあります。

契約を締結したら契約に基づき、債権者に交渉をします。一般的に交渉は依頼した業者が行います。交渉のポイントとしては、売却価格、販売期間、諸費用の負担、引っ越し費用の捻出などが挙げられます。債権者の同意が得られれば任意売却を進めることができます。

④販売を開始し買主を決定

住宅情報サイトや新聞、チラシ、業者のホームページなどに物件の情報が掲載され、販売活動が開始されます。購入希望者が現れたら、購入の意思がある旨を表示する「買付証明書」を作成してもらい、債権者へ提出します。購入価格の承諾をもらえれば、買受人が決定という流れになります。

この買付証明書は発行されたからといって購入・契約の義務を負うものではないので、購入希望者は売買契約の締結前であれば、これを取り消すことができます。

⑤債権者の同意を得る

債権者に購入価格から差し引かれる金額の配分を表にして提出します。差し引かれる金額は仲介手数料や抵当権抹消登記費用などがあります。また債権者が1つでない場合、各債権者の残債も記載する必要があります。

その配分表で債権者の同意を得ることになりますが、複数の債権者がいる場合、全ての債権者に同意を得なければいけません。同意が得られたら、買受人と売買契約を締結します。その後決済や引き渡しの日時を決めていきます。

⑥不動産引渡しおよび代金決済

売買契約締結から約1ヶ月から1ヶ月半後に代金の決済が行われます。買受人から支払われた購入代金を債務の返済に充て、抵当権の解除や不動産の引き渡し、諸費用や引っ越し費用などの支払いなどを行います。また、残債が残ってしまったときの支払方法なども、この場で交渉する必要があります。

任意売却をするときの注意点

次に任意売却の注意点に関して見ていきましょう!

  1. できるだけ早く不動産業者に相談する
  2. 任意売却できない場合は競売にかけられる
  3. ブラックリストに載る可能性がある

①できるだけ早く不動産業者に相談する

任意売却を無事に成功させるために、不動産を手放すと決めたらできるだけ早く任意売却専門業者に相談をしましょう。可能であれば、不動産を手放すと決める前の「ローンの支払いを滞納してしまい目処がたたない」段階で相談するのが理想です。

任意売却は時間との勝負なので、依頼するのを迷っていると購入者を探す時間がなくなったり、債権者から任意売却の同意を得られず競売になってしまう可能性が高くなります。

②任意売却できない場合は競売にかけられる

任意売却には必ず売れるという保証はありません。充分な時間がなかったり、購入希望者が現れない場合には、当初の予定通り競売にかけられることがほとんどです。

競売にかけられても売却できるといった保証はなく、売れなかった場合再度競売にかけられます。このように競売にかけられる都度価格は下がっていきます。

③ブラックリストに載る可能性がある

任意売却に限ったことではありませんが、住宅ローンを3ヶ月以上滞納した場合、信用情報機関に登録され、ブラックリストに載ってしまう恐れがあります。ブラックリストに載ってしまうと、車の購入のためのローンや、クレジットカードの作成などで審査が通らなくなります。

審査が通らなくなるのは5~7年程度ですが、ブラックリストに載った記録は消えません。また、最近ではマンションやアパートを借りる際も保証会社を通すことが多く、賃貸物件を借りることもできなくなる可能性が高まります。

任意売却に必要な書類

任意売却に必要となる書類を紹介します。必要書類は多く、提出を求められた際すぐに揃えられるよう、事前に用意しておくことをおすすめします。

  • 登記識別情報「登記済権利証」のコピー
  • 免許証やパスポートなどの身分証明書のコピー
  • 物件購入時における、不動産売買契約書および重要事項説明書
  • 建築確認申請書写し・間取図・購入時のパンフレット
  • 固定資産評価証明書
  • 固定資産税納付書のコピー
  • マンションの場合は、管理規約書、管理費と修繕積立金の明細、管理会社
  • 物件の写真(ない場合、査定の時に業者が撮ってくれる)
  • 住宅ローン借入時の債権者との金銭消費貸借契約書、保証委託契約書
  • 競売開始決定通知書・督促状等
  • 印鑑証明書(発行から3カ月以内のモノ)

[まとめ]任意売却は競売にかけられるよりメリットが多い

競売にかけられてしまうとその事実は消えません。購入するのであれば、競売にかけられたことがない物件が良いと考える人が多いと言えます。自分たちが大切に住み続けてきた家ですから、できるならその家が良いと気に入ってもらえる人に託したいですよね。

また、任意売却であれば、手放さなければならないと考えていた家に住み続けることができる可能性も与えてくれます。競売をただ待つのではなく、できる限りのことをして悔いのないようにしましょう