子供の成長や転勤といったライフスタイルの変化で、住み替える場合には居住している住宅を売却するケースが多く、売却で得た金額を新たな住宅の購入資金に充てたいと考える人も多いことでしょう。
しかし、より高値での売却を期待しても、実際は想像以上に低い金額で売却してしまったという失敗事例も多いのが現状です。
この記事を読んで、不動産の売却で失敗しないためにのポイントを把握し、より高くスムーズに売却するコツを掴んで不動産売却を成功に導きましょう。
不動産売却の依頼の流れ

不動産の売却を検討した際には、まずは何からスタートすれば良いのか悩みがちです。
すぐに不動産会社に査定を依頼するのではなく、以下の7つのステップに沿って進めましょう。
【ステップ1】事前準備(情報収集)
相場に見合った価格、もしくは相場よりも高値での売却を目指すためには、まずは売却を予定している不動産の相場を把握することが大切です。
相場の具体的な調べ方は次の章で詳しく解説していきますが、特別に難しい手段を用いなくてもインターネットで比較的簡単に調べられるので安心です。
情報収集する際のポイントは、売却を検討している不動産と立地や間取りなどが類似した物件を探すことです。
最も身近な手段としては新聞の折り込み広告やポスティングされるチラシ、フリーの住宅情報誌などが挙げられますが、掲載されている売り出し価格と売却価格は異なるので注意が必要です。
【ステップ2】不動産会社を探す
売却を予定している不動産の相場を把握すると、次に査定や仲介を依頼する不動産会社探しに移ります。
不動産会社は、テレビCMや広告で頻繁に見かける機会も多いことでしょう。
公益財団法人不動産流通推進センターが2018年に公表したデータによると不動産会社数は30万件に及び、年々増加していることがわかっています。
このように、非常に多い不動産会社の中から査定や仲介を依頼する不動産会社を探すのは大変です。
しかし、不動産の売却を成功に導くためには不動産会社選びが売却成功の重要なポイントになるため、慎重に行うことが大切です。
そこで、不動産会社探しに便利な一括査定サイトの利用しましょう。
一括査定サイトはインターネット環境さえあればいつでもアクセスでき、大手から地域密着の不動産会社まで幅広く網羅していることが魅力です。
一括査定サイトを利用する際には、大手と地域密着の双方のメリット・デメリットを把握するために、双方を含んだ不動産会社選びをすることがポイントです。(大手2社・地域密着2社)
不動産会社の選び方については不動産売却頼むならどこがいい?|自分にあう会社を選ぶコツでも詳しく紹介しています。査定依頼をする不動産会社のどこを見ると効率よく選べるのか、コツをおさえておきましょう。
【ステップ3】不動産会社に査定依頼
不動産会社では、賃貸・仲介・管理といった主に3種類の業務を行っています。
不動産の売却は仲介業務にあたり、売り手と買い手を仲介し、売却や購入をサポートします。
不動産の売却は自分で買い手を見つけて直接取引もできますが、一般的ではありません。
ほとんどの場合、不動産会社に査定や仲介を依頼して取引が行われます。
一括査定サイトを利用する場合は、連絡先や物件情報を一度入力すれば数十秒から数分程度で結果がわかるのでスピーディーです。
不動産は築年数に応じて価値が下がるのが一般的ですが、以下のような好条件の場合は高い査定額が算出されるケースもあります。
- 立地条件が良い(駅からの距離が近い、周辺環境の充実度など)
- 築年数が10年以下(築年数10年を超えるとマイナス査定の可能性あり)
- 内装(適切に修繕、リフォームが行われているなど)
- 方角(南向き、角部屋、角地など)
- 展望の良さ(マンションの場合は高層階)
不動産会社が「どこを見て査定をしているのか」については中古住宅を査定する10のポイントとは?高く売る方法まで徹底解説にも紹介しています。どんな不動産だと何故高く売れるか知りたい人におすすめです。
【ステップ4】媒介契約を結ぶ
仲介を依頼する不動産会社が決まると、不動産を売り出すために不動産会社と媒介契約を結びます。
媒介契約は不動産会社に売り出しを一任するもので、無事に売買契約が成立すると仲介手数料の支払い義務が生じます。
媒介契約には3種類あり、それぞれメリット・デメリットが異なるため、内容をきちんと確認した上で契約するようにしましょう。
なお、媒介契約については以下の章で詳しく解説していきます。
媒介契約は不動産取引におけるトラブルを回避するために、宅地建物取引業法によって義務付けられているため、不動産会社に仲介を依頼する際には避けては通れない契約となっています。
媒介契約について詳しく知りたい方はこの記事の「不動産売却時の3種類の契約方法」のほか、「不動産をスムーズに売りたい人必見!売却を成功させるための知識」が参考になるでしょう。
【ステップ5】価格決定・売却活動
不動産会社から提示された査定額がそのまま売り出し価格になる訳ではなく、このくらいの価格で売却できるであろうといった目安でしかありません。
不動産の価格設定には正確な基準はなく、査定額は売り出し価格を決定する際の参考資料の一つです。
より高値で売りたいからと言って査定額からかけ離れた高い価格で販売しても、買い手がつきにくいのが現状です。
その一方で早く売りたいがために査定額よりも低い価格で売却すると、実はもっと高く売却できたかもしれないといった後悔に苛まれる可能性も無きにしも非ずです。
従って、周辺の類似物件の相場と査定額を天秤にかけ、不動産会社と相談しながら妥当な価格設定をおすすめします。売り出し価格が決定すると、実際に不動産を売り出す売却活動がスタートします。
売却活動は媒介契約を結んだ不動産会社が行ってくれるため、売り手が特別に何かする訳ではありません。
しかし、媒介契約の内容に応じた業務状況の報告がきちんとされていることを確認することは大切です。
売却活動では、主に以下のような手段で不動産を売り出します。
- 不動産会社の公式サイトや不動産ポータルサイトへの掲載
- 不動産会社のネットワークを通じた顧客への紹介
- 新聞の折り込み広告やポスティング
- 住宅情報誌への掲載
- レインズへの登録 など
なお、これらの売却活動に伴うコストは仲介手数料に含まれていますが、売り手が特別な広告を依頼した際には別途請求される可能性があるので注意が必要です。
【ステップ6】売買契約を結ぶ
売却活動に伴い、売り出し中の不動産に興味を持った購入希望者が現れると、実際に物件を見学してもらう内覧を受け入れるのが一般的です。
すでに転居して売り出している場合は、購入希望者の印象アップを目的として内覧までにハウスクリーニングを依頼しておくと良いでしょう。
一方で居住中のまま売り出している場合は、整理整頓や清掃に加え、部屋を明るく見せるなどの工夫を心がけましょう。
売買契約に繋げるためには内覧が重要なポイントとなるため、目立つ傷や汚れを放置しておくことのないように注意しましょう。
購入希望者が購入の意思を固めると、値引き交渉を経て売買契約に移ります。
値引き交渉はほとんどの不動産取引で行われており、決して珍しいことではありません。
物件の状態によっては、売り出し価格を設定する際に値引き交渉を見込んだ価格で設定する可能性もあります。
売買契約は、売り手・買い手・不動産会社の3者の立ち合いで行われます。
なお、契約書の作成やスケジュール調整などは不動産会社が行ってくれるので安心です。
不動産の売買契約においては消費者を保護するために一定の規定が設けられているものの、特別な法律上の規定はないため、最終的には自己責任となります。
そのため、内容をきちんと確認した上で契約を結ぶようにしましょう。
売買契約時には、買い手から売却価格の一部を手付金として受け取ります。
手付金の金額は売却価格の10~20%程度だと言われていますが、法律上の規制は特にありません。
この手付金は、売買契約後に買い手側の一方的な都合で契約解除に至った場合の補償金となるものですが、原則として買い手と売り手の双方も簡単には契約解除できません。
また、不動産を売却する際には売り手に瑕疵(かし)担保責任の義務が生じます。
瑕疵(かし)担保責任とは、物件を引き渡してから一定の期間に欠陥が見つかった場合、修繕などの費用を売り手が負わなければならない義務のことを指しています。
過去には重大な欠陥を隠していたことが原因となり、瑕疵(かし)担保責任で多額の損害賠償を請求された事例もあるため、不動産の欠陥は隠すことなく伝えるようにしましょう。
少しでも円満な交渉が出来るように準備したい方は、不動産売却の交渉ポイント|物件を高く売る方法について解説も参考になります。価格交渉以外にも、どんなことに気をつけたらよいか分かります。
【ステップ7】不動産の引き渡し
売買契約を結ぶと、一定の期間を置いた後に不動産を引き渡します。引き渡しの期間が空いている理由は、買い手による住宅ローンの申請準備やハウスクリーニングなどの必要性が挙げられます。
一般的には1.5~3カ月程度の期間を経て引き渡しが行われており、期日までに引き渡せない事態が起こると違約金が発生する可能性があるので注意が必要です。
不動産の引き渡しと同時に手付金以外の残金を支払う決済が行われ、この時に住宅ローンを完済する必要がある場合は抵当権抹消手続きも行わなければなりません。
抵当権抹消手続きや所有権の移転登記は、司法書士に依頼するのが一般的で、その場合には司法書士への報酬が15,000円程度必要です。
決算と同時に住宅ローンを完済する場合、引き渡しと決算は金融機関で行われるケースが一般的です。
最後に物件の鍵や備品のパンフレットなどを買い手に渡し、不動産の売却が完了します。
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不動産売却価格の相場の調べ方

不動産の査定額が把握できても、査定額がそのまま売却価格とはならないため、実際に取引された価格を知ることが大切です。
ここでは、不動産を売却する際に相場を調べる方法を順に解説していきます。
レインズ・土地総合情報システムを利用
不動産の売り出し価格や売却価格を調べる際には、レインズや土地総合情報システムの利用がおすすめです。これらのシステムはインターネットから簡単に検索できるので便利です。
レインズ
レインズとは、公益財団法人不動産流通推進センターが運営するREAL ESTATE INFORMATION NETWORK SYSTEM(不動産流通標準情報システム)のことで、それぞれの頭文字をとってREINS(レインズ)と呼ばれています。
レインズは不動産の円滑な取引を目的として起ち上げられたシステムで、国土交通大臣に指定された信頼性の高いサイトです。
物件情報を登録することでより多くの不動産会社や購入希望者の目に触れるため、媒介契約によってはレインズへの登録が義務づけられています。
ちなみにレインズの閲覧は、原則として不動産流通機構の会員となっている不動産会社のみに限られています。
しかし、公益財団法人不動産流通推進センターが運営する不動産ジャパンを利用すると、誰でも検索や閲覧ができます。
検索時には、エリアを絞るだけで簡単に物件情報がリストアップされます。
「不動産ジャパン」を利用すればレインズと同等の内容の閲覧ができるため、売り出し価格の相場を把握する際に有効です。
土地総合情報システム
土地総合情報システムは国土交通省が運営するサイトで、不動産の取引価格や公示地価などを検索・閲覧できます。
国土交通省では過去に不動産取引した人を対象にしたアンケート調査を行っており、土地総合情報システムの不動産取引価格情報に反映されています。
2013年1月以降の情報を検索でき、取引時期・物件種別・エリアを選択するだけで簡単に閲覧できます。
ただし、反映されている情報は回答があった情報に限られるため、全ての不動産取引情報が掲載されている訳ではないので注意しましょう。
参考:土地総合情報システム
【一番おすすめ】一括査定サイトを利用
レインズや土地総合情報システムでは、不動産の売り出し価格や取引価格の把握に限られるのが現状です。
そこで、不動産の売却をスムーズに進めるために、相場を把握しながら不動産会社選びや担当者探しができる一括査定サイトがおすすめです。
一括査定サイトを利用すると、査定を簡単に依頼できたり不動産会社選びに役立つといったメリットがあります。
その一方で、一括査定サイトの数は非常に多く、どのサイトを利用して良いのか悩みがちです。
一括査定サイトを選ぶ際には、独自の審査基準をクリアした不動産会社のみと提携していることや提携不動産会社数などをチェックすることがポイントです。
また、実名を知られたり電話勧誘を避けたい場合は、匿名で査定をできるサイトを選ぶと良いでしょう。
一括査定サイトでは同時に複数社に査定を依頼できるため、相場を把握しやすいことが魅力の一つです。
不動産売却の事例を紹介
売却を予定している不動産があるエリアや立地条件によって売却価格は異なり、物件種別によっても異なります。
ここでは、実際に取引された事例を紹介していきます。
【事例1】築6年3LDKの首都圏マンション
東京オリンピックの開催決定が相まって、首都圏における新築マンションの平均価格は上昇を続けており、2018年には6,000万円を超えています。
長年に渡って人気の高い東京都港区南青山の中古マンションは、以下のような金額で取引されています。
- 所在地:東京都港区南青山
- 最寄り駅からの距離:徒歩10分
- 間取り:3LDK
- 建築年:2013年
- 取引価格:1臆4,000万円
このエリアは、2019年の地価公示でも1平方メートルあたり502万1,428円と高いことがわかっています。また、同エリアで1998年に建てられた築20年を超えた類似物件でも、2億円近い価格で取引されています。
【事例2】築2年延床面積110平米の地方の戸建て
2019年に公表された地価公示によると、広島県広島市の住宅地における地価は5年連続で上昇していることがわかっています。
需要の高いエリアでは戸建てやマンションが高い価格で取引されており、近年ではタワーマンションも登場しています。
- 所在地:広島県広島市南区宇品神田
- 最寄駅からの距離:徒歩30~60分
- 構造:木造
- 建築年:2018年
- 取引価格:3,900万円
このエリアは市街からそれほど離れておらず、通勤や通学に便利なエリアとして需要の高い傾向にあります。同エリアの類似物件でも、4,400万円と高額で取引された事例もあります。
【事例3】230平方メートルの地方の土地
土地の取引においては、立地条件だけでなく土地の形状が価格に及ぼす影響が高いと言われています。
活用方法が幅広い土地では高値で取引されるケースもあり、古い建物が建っている場合には解体して更地として売り出すという手段も選択できます。
- 所在地:長野県長野市青木島町
- 最寄駅からの距離:30~60分
- 形状:ほぼ正方形
- 取引価格:1,500万円
長野県長野市青木島町は、長野県のちょうど中央あたりに位置するエリアです。
同エリアの類似物件では、1,200~1,600万円程度で取引されています。
ちなみに同エリア内で1Kの賃貸物件の場合、3.9~5万円程度が相場です。
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不動産会社の選び方

諄いようですが、不動産売却を成功させるためには不動産会社選びが重要です。
不動産会社を選ぶ際には、以下で示す5つの点を押さえておくと良いでしょう。
また、優良な規模は規模に応じて比例するとは限らないため、それぞれのメリットやデメリットを把握しておきましょう。
【選び方①】不動産会社の得意分野を確認
大手から地域密着まで規模のさまざまな不動産会社が存在しますが、不動産会社によって得意分野が異なります。
一般的な不動産の売買においては、主にマンション・戸建て・土地の3種類に分類されます。
全ての物件種別を取り扱っている不動産会社がほとんどですが、マンションの売買が得意など特定の物件種別によって得意分野が異なります。
不動産会社の中には賃貸業務を主としており、中古住宅の売買を得意としないケースもあるのが現状です。
したがって、不動産会社選びの際には、売却を検討している物件種別の売買に長けている不動産会社を選ぶことが大切で、それを見極めるには以下のような情報を参考にしましょう。
- 新聞の折り込み広告
- 不動産会社の公式サイト
- 住宅情報誌 など
これらのツールに掲載されている情報から取り扱っている物件種別の多さや実績を確認することで、不動産会社の得意分野が見えてきます。
【選び方②】免許番号・行政処分を確認
売り手の立場をかえりみることなく、不動産会社に有利な状態で売却を進める悪徳不動産会社も存在します。
このような悪徳不動産会社に騙されないためには、宅建業免許番号や行政処分情報を確認することが大切です。
宅建業免許番号
宅建業免許番号の正式名称は、宅地建物取引不動産会社免許番号と言います。
この番号は不動産会社が宅地建物取引業として認可された際に割り当てられる番号で、国土交通省の公式サイトを利用すると認可の有無を確認できます。
このサイトで検索しても宅建業免許番号が表示されない場合は、無認可の不動産会社であることがわかります。
参考:建設不動産会社・宅建不動産会社等企業情報検索システム(国土交通省)
行政処分情報
行政処分を受けた過去がある不動産会社の場合、不動産の売却を任せるに当たって信頼性が低いと言えるでしょう。
国土交通省では宅建業免許番号の他に、過去の行政処分情報を検索できるネガティブ情報等検索システムが運営されています。
このシステムでは事業所名とエリアなどを入力すると、行政処分を受けた日付や宅建業免許番号、処分内容などが検索できます。
【選び方③】ネットの口コミや評判
1984年に日本で初めてインターネットが登場し、1990年代から急速にインターネットが普及してきました。最も古い一括査定サイトは2001年に運営が開始されており、実に20年近くの歴史を誇っています。
スマホの普及も相まって、現在では当たり前のようにインターネットが身近となり、インターネット上ではさまざまな口コミが投稿されています。
美容院や飲食店を利用する際に口コミを参考にする人も多く、口コミは何かを選択する時に必要な参考資料のとなっています。
不動産会社に対する口コミも数多く投稿されており、口コミランキングサイトも存在します。
不動産会社などのサービスを利用する場合、あまりにも評判が悪いと遠慮しがちです。
そのため、最初から一つのサイトに絞って口コミを参考にするのではなく、複数のサイトを見比べると良いでしょう。
また、悪い口コミ・良い口コミだけを鵜呑みにするのではなく、人によって受け取り方は異なるため、あくまでも口コミは参考程度にしておきましょう。
【選び方④】査定額の根拠・売却戦略を聞く
不動産会社探しの際には、誠実で相性の良い担当者に出会うことも大切です。
誠実な担当者を見極めるには、提示された査定額の根拠を質問してみると良いでしょう。
相場よりも査定額が低い、もしくは高い場合、なぜこのような査定額に至ったのかという根拠をきちんと説明できる担当者は誠実である可能性が高いと言えるでしょう。
また、相場よりも異常にかけ離れた高い査定額を提示する不動産会社もありますが、このような不動産会社は仲介手数料目的で、後々値下げすることを想定している悪徳不動産会社の可能性があるので注意が必要です。
公益財団法人不動産流通推進センターでは、会員の不動産会社向けに価格査定マニュアルを提供しており、ほとんどの不動産会社がこれを用いて査定額を算出しています。
これまでも記述してきたように不動産会社によって査定額が異なり、これには立地条件や建材を評価する項目への点数の付け方に差があることが考えられます。
不動産会社が算出する査定額は過去の取引事例も参考にするため、周辺の類似物件の取引が多いほど適正価格に近い査定額が期待できます。
不動産は一定期間を経て売却できないと、その後も当初設定した価格で売却できる見込みは少ないと言われています。
それは不動産の売却に平均で3~6カ月を要し、それ以上の期間になると購入希望者の目を止めるために値下げせざるを得なくなるからです。
不動産をより高値でスムーズに売却するためには、不動産会社の売却戦略の影響が大きいと言えるでしょう。売却戦略は不動産会社によって異なり、担当者のスキルの高さが試されると言っても過言ではありません。
そのため、広告活動の内容やターゲット層の絞り込みなど、具体的な売却戦略を提案してくれる不動産会社がおすすめです。
【選び方⑤】話を親身に聞いてくれる
不動産を売却する際には、不動産会社選びと同様に誠実な担当者に出会うことがポイントです。
不動産会社側も業務の一環として査定や売却を行っているため、利益を優先せざるを得ない場合もあることでしょう。
しかし、誠実な担当者であれば売り手の立場に立って親身に話を聞いてくれるはずです。
例えば某大手不動産会社の場合、不動産の売却を相談するとまずは売り手に見合った売却プランを提案してくれます。
住宅ローンの残債に査定額が満たない場合、売り手が自己資金を充てなければなりません。
売り手の立場に立ってくれる担当者なら、住宅ローンの残債を見込んでより高値での査定実績のある複数社に訪問査定を依頼し、その中で最も高い査定額を提示してくれる不動産会社を紹介してくれます。
また、目立つ傷や汚れがある場合、修繕した方が査定額がアップする可能性が高いなど、不動産会社にとって都合が悪い情報もきちんと教えてくれる担当者は信頼性が高いと言えるでしょう。
このような担当者に出会えれば、売り手にとってより良い売却に繋がる可能性が高く、買い手との話し合いも上手くまとめて進めてくれることが期待できます。
大手と地域密着の不動産会社どちらがおすすめ?
宅地建物取引業法では、不動産会社のスタッフ5人以上に1人以上の割合で宅地建物取引士を配置しなければならないという規則があります。
担当者が国家資格である宅地建物取引士を有していると、不動産に関する知識が豊富なので信頼性は高まると言えるでしょう。
また、不動産会社は誰もが知っているような大手から地域密着までさまざまです。
地域密着で小規模な不動産会社だからと言って、決してスキルやノウハウがない訳ではありません。不動産会社の規模に関わらずメリットもあればデメリットもあるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
【大手のメリット・デメリット】
大手のメリット・デメリットは、主に以下の項目が挙げられます。
メリット
- 知名度が高いので安心感がある
- 実績や情報量が豊富
- 全国を網羅している
- 広告に使用できる予算が高め
- 情報の公開範囲が広め
- 顧客数が豊富
- ネットワークシステムの充実
- 物件種別に囚われず対応できる
デメリット
- マニュアルに沿った対応なので融通が利きにくい
- 売却を不動産会社主導で進められやすい
- 特定のエリアに特化した情報を把握しきれていない
- 担当者が地元出身のケースが多い
このように大手のメリットは多く、全国に幅広いネットワークを持っており、どの物件種別にも対応できることが特徴です。
その一方で、売却価格よりも売却期間を優先されるなど、不動産会社側に有利な条件で売却を進められる可能性があります。
また、地域密着と比べると売り手の要望に対して柔軟な対応がしきれない可能性もありますが、担当者が売り手の知り合いだったり知人の紹介の場合はこれに限りません。
【地域密着のメリット・デメリット】
地域密着のメリット・デメリットは、主に以下の項目が挙げられます。
メリット
- 特定のエリアに特化した情報を把握している
- 大手よりも融通が利きやすい
- 対象エリアでの購入希望者を把握している
- 対象エリアにおける物件データが豊富
デメリット
- 実績や情報量が少ない場合がある
- 特定のエリアに限定されている
- 広告に使用できる予算が低め
- 情報の公開範囲が限られる
- 不動産会社によってスキルやサービスの質にバラつきがある
- 対応できる物件種別に制限がある可能性
このように大手と異なり、地域密着は特定のエリアに特化した情報が豊富で、売り手の要望に対して柔軟に対応してくれやすいことが特徴です。
また、購入希望者が物件探しで相談している可能性もあるため、対象エリアでの買い手がみつかりやすいと言えるでしょう。
その一方で、大手に比べると実績や情報量は劣る傾向にあり、不動産会社によってスキルやサービスの質にバラつきがあることがデメリットです。
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おすすめの一括査定サイト3選
サイト名 | 利用者数 | 対象エリア | 提携会社数 | 同時依頼数 |
イエウール | 1,000万人 | 全国 | 1,700社 | 6件 |
イエイ | 400万人以上 | 全国 | 1,700社以上 | 6件 |
リビンマッチ | 440万人 | 全国 | 1,400社 | 6件 |
イエウール:全国1,700社以上に対応
地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。
利用者数 | 1,000万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6社 |
取引件数 | 非公開 |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | 株式会社Speee (Speee, Inc.) |
サイト内では< class=””>一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。
イエイ:お断り代行サービスを提供
大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。
利用者数 | 400万人以上 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 1,000件以上 |
顧客満足度 | 97% |
運営会社 | セカイエ株式会社 |
都心部だけでなく、地方の物件を売却したい人にもおすすめです。また、査定を依頼した不動産会社からの営業連絡を断りたい際に、代わりに断ってくれる「お断り代行」サービスがあるため、営業電話を断りにくい人におすすめです。
なお、依頼先の不動産会社は自分で選べる仕組みとなっています。
リビンマッチ:利用したいサイト第1位
都道府県別に、このサイトに登録している不動産会社の情報をあらかじめ調べることができ、その中から売却査定実績の多い不動産会社を選べることが特徴です。
利用者数 | 440万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,400社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 14万件(年間) |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | リビン・テクノロジーズ株式会社 |
全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、< class=””>どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。
不動産売却時の3種類の契約方法

不動産会社に仲介を依頼する際には、不動産会社と売り手との間で媒介契約を結びます。媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類あり、それぞれ内容が異なります。
契約の種類によってメリット・デメリットがあるため、自分に合った契約方法を選択するようにしましょう。以下の表では、媒介契約の特徴をまとめています。
契約の種類 | 複数社と契約 | 売り手が買い手を見つけた場合の取引 | レインズへの登録 | 業務状況の報告 | 有効期間 |
一般媒介契約 | 可 | 可 | 任意 | 任意 | 制限なし(ただし、3カ月以内が望ましい。) |
専任媒介契約 | 否 | 可 | 契約の翌日から7日以内 | 2週間に1度以上 | 3カ月以内 |
専属専任媒介契約 | 否 | 否 | 契約の翌日から5日以内 | 1週間に1度以上 | 3カ月以内 |
一般媒介契約
一般媒介契約は他の契約と異なり、同時に複数の不動産会社と契約できることが最大の特徴です。
また、この契約には明示型と非明示型があり、非明示型を選ぶと、どの不動産会社と契約しているかを知らせる必要はありません。
【メリット】
- 複数の不動産会社と同時に契約できる
- 売り手自らが買い手を見つけた場合、不動産会社を通さずに取引できる
- 不動産会社同士での競争原理が働きやすい
- 契約期間を自由に設定できる
【デメリット】
- レインズへの登録義務がないため、情報の公開範囲が狭い
- 不動産会社から売り手へ業務状況の報告義務がない
- どの不動産会社で売却できるかわからないため、売却活動を怠る不動産会社がある可能性
- 売却後に発見された不具合の修繕やハウスクリーニングが無料でない傾向が高い
- 契約した不動産会社が多いほど、個別対応しなければならない回数も増える
このように一般媒介契約を結ぶと、不動産会社同士で競争原理が働くため、積極的に売却活動を行ってくれる可能性がある一方で、非明示型だと売却活動を怠る可能性も考えられます。
また、買い手を見つけた不動産会社は仲介手数料が売り手と買い手の双方から支払われるため、自社で買い手を見つけた方が不動産会社にとってメリットが大きいと言えるでしょう。
しかし、これを狙って物件情報の公開を意図的に制限する「囲い込み」が行われるケースもあります。
囲い込みされると、買い手を確保するために売り手に値下げを求めるケースも少なくなく、スムーズに売却できない可能性も高まります。
一般媒介契約では複数社と同時に契約できるため、このような囲い込みを回避できると言えるでしょう。
なお、契約期間は自由に設定できますが、国土交通省による標準媒介契約約款では他の契約と同様に3カ月以内が望ましいとされています。
より詳しく知りたい方は、一般媒介契約の期間はいつまで?メリットやデメリットを徹底解説もおすすめの記事です。
専任媒介契約
専任媒介契約は契約する不動産会社が1社に限られる一方で、売り手が自ら買い手を見つけた場合でも取引できることが特徴です。
【メリット】
- 売却活動に伴う窓口が一本化される
- 売り手自ら買い手を見つけた場合でも取引できる
- 契約から7日以内にレインズへの登録義務がある
- 不動産会社は2週間に1度以上の頻度で業務状況の報告義務がある
- 売却活動に対して不動産会社が積極的になってくれやすい
【デメリット】
- 1社のみと契約するため、囲い込みに遭うリスクが高い
- 選んだ不動産会社が悪徳不動産会社の可能性
- 不動産会社に営業スキルがないと売却までに時間が掛かる可能性
このように専任媒介契約は1社としか契約できないため、連絡のやり取りが一つなので業務状況が把握しやすいと言えるでしょう。
また、レインズへの登録義務があるため、より多くの人に物件情報を周知できます。
しかし、1社としか契約できないことで、囲い込みに遭うリスクが高いため、不動産会社を見極める力が求められます。
専属専任媒介契約
2015年に一般財団法人土地総合研究所が行った「不動産業についてのアンケート調査」では、専属専任媒介契約を選ぶ人が最も多いことがわかっています。
【メリット】
- 売却活動に伴う窓口が一本化される
- 契約から5日以内にレインズへの登録義務がある
- 不動産会社は1週間に1度以上の頻度で業務状況の報告義務がある
- 売却活動に対して不動産会社が積極的になってくれやすい
【デメリット】
- 1社のみと契約するため、囲い込みに遭うリスクが高い
- 売り手自ら買い手を見つけた場合は取引できない
- 選んだ不動産会社が悪徳不動産会社の可能性
- 不動産会社に営業スキルがないと売却までに時間が掛かる可能性
このように専属専任媒介契約と専任媒介契約のメリット・デメリットはほとんど変わりませんが、専属専任媒介契約では売り手が自ら買い手を見つけた場合に取引できないことがデメリットです。
では、なぜ専属専任媒介契約を選ぶ人が多いのかというと、それはレインズへの登録が早く、不動産会社から業務状況の報告頻度が1週間に1度以上と多いことが挙げられます。
レインズへの登録が早ければより早く物件情報を公開でき、業務状況の報告が頻繁だとなかなか売れない場合の対策が立てやすいと言えるでしょう。
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所有している不動産を早く・高く売るコツ

不動産を売却するまでの期間は、平均で3~6カ月程度だと言われています。
それ以上の期間を要すると、値下げせざるを得なくなる可能性もあるため、できるだけスムーズに売却することが高値での売却に繋がります。
【必ず使うべき】一括査定サイトを利用
不動産をできるだけ高値でスムーズに売却するためには、一括査定サイトを利用した上で「不動産会社の選び方」で解説した5つのポイントを踏まえ、目的に合った不動産会社に仲介を任せると良いでしょう。
また、売却価格の相場を把握することは、適切な価格設定や売却戦略に使える指標になるため、チェックすることが必要不可欠です。
一括査定サイトのメリットは、査定を簡単に依頼できることだけではありません。
不動産会社選びや担当者の見極め、相場の把握など個別に進めると面倒な作業も同時進行できることが一括査定サイトを利用する最大の強みだと言えるでしょう。
3カ月以上の売却活動期間を設ける
不動産を売却する期間は、スムーズに進んだ場合でも3~4カ月程度掛かるのが現状です。
また、不動産の売却は3カ月が勝負だとも言われており、それ以上の期間を要しても売却の見込みがない場合は長期戦となる覚悟が求められます。
これは実際に物件を売り出してから引き渡しまでの期間で、情報収集や不動産会社探しなどの準備期間は含まれていません。したがって、売却には余裕を持ったスケジュールで臨むことが大切です。
そうは言っても、急な転勤や介護などの理由で売却を急ぐ必要がある場合も考えられます。
このような場合は、一般的な売買ではなく不動産会社による買取を検討してみましょう。
ただし、不動産会社による買取の場合は相場の60~70%程度となるため、それを踏まえて高値での売却を目指すと良いでしょう。
売却活動前にメンテナンスをしておく
購入希望者の内覧を受け入れても、売買契約に繋がらないといったケースも少なくありません。
その物件に居住するのは購入者であるため、実際に居住していることを想定して内覧に臨むことでしょう。
特に購入希望者が気にする箇所は、キッチンやトイレ、浴室などの水回りです。水回りは毎日使用するため、汚れがつきやすい箇所だと言えるでしょう。
この他には、居住者にとっては慣れてしまって気にならない臭いにも注意が必要です。
気になる箇所がある場合は、売買契約に繋がりにくいだけでなく、それを根拠に値引き交渉を求められる可能性もあるため、高値での売却は期待できません。
清掃はもちろんのこと、修繕が必要な箇所は不動産会社に相談した上で適切にメンテナンスしておきましょう。
ただし、大掛かりなリフォームを検討している場合、価格設定の際にリフォーム代を上乗せできる訳ではないので注意が必要です。
リフォームして綺麗な空間を購入希望者に見てもらえば、売買契約に繋がる可能性は高くなるでしょう。
しかし、大掛かりなリフォームは必要ないケースもあるため、不安な場合はまずは不動産会社に相談するようにしましょう。
ちなみに対面キッチンをリフォームする場合、20~100万円程度の費用が掛かります。
しかし、蛇口の交換程度であれば18,000~50,000円程度で済みます。
売却時期は3月を狙う
不動産業界では、新年度がスタートする直前の1~3月が繁忙期だと言われています。
新年度は学校の新学期や人事異動での転勤で新生活をスタートする人も多く、1~3月に購入需要が高まります。
この時期に次いで、人事異動による転勤で転居する人が多い9~11月も繁忙期だと言われています。
これらの時期は、引越しシーズンと言われるタイミングと重なります。
人の動きが多い時期を狙って不動産を売り出すと、値下げすることなくスムーズな売却が期待できます。
ただし、この時期での売却を目指すためには、それまでに不動産会社選びや価格設定などの下準備を済ませておかなければなりません。
さらに、同じようにこの時期を狙って周辺で類似物件が多数売り出された場合、競合となることは避けられないと言えるでしょう。
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不動産売却時にかかる費用・税金

不動産を売却する際には、仲介を依頼した不動産会社に対して支払う仲介手数料や各種税金や諸費用が掛かります。
これらの金額は売却価格に応じて高くなる傾向にあるため、予め概算しておくことをおすすめします。
【必ず発生する費用】
不動産の売却で利益が出ても、各種費用を換算するとマイナスになる場合も考えられます。
売却と同時に住宅ローンの完済を想定すると、売却益は以下の計算式で算出できます。
売却益=売却価格 ー(仲介手数料+印紙税+登録免許税+住宅ローン返済費用+税金)
不動産を売却する際には、必ず発生する費用とそうでない費用があります。状況に応じて掛かる費用は異なりますが、以下の費用は必ず掛かります。
- 仲介手数料
- 印紙税(印紙代)
- 登録免許税(所有権移転登記・抵当権抹消登記)
- 譲渡所得税
【場合によって発生する費用】
不動産の売却に伴う手続きを全て自分で行うこともできますが、中には複雑な手続きもあり、司法書士に依頼する場合もあります。
場合によって発生する費用は、以下の通りです。
- 司法書士の依頼費用
- 測量費/解体費など
- 振込手数料
それでは、ここまででご紹介してきた不動産の売却に掛かる費用を詳しく解説していきます。
仲介手数料
仲介手数料は、仲介を依頼した不動産会社に対して支払う費用のことを指しています。
この費用は成功報酬型のため、売買契約の成立と同時に支払い義務が発生します。
なお、仲介手数料は宅地建物取引業法で上限額が定められており、それ以内であれば不動産会社ごとに自由に価格設定できる仕組みとなっています。
売買価格に応じて費用が異なり、売買価格が高いほど仲介手数料も高くなります。
以下の計算式を用いると、仲介手数料が算出できます。
仲介手数料=売買価格 × 3%+6万円(消費税別)
例えば売買価格が1,000万円の場合、この計算式に当てはめると以下のような金額になります。
1,000万円(売買価格) × 3%+6万円(消費税別)=38.88万円
このように、仲介手数料だけでもかなりの費用が掛かることがわかります。
なお、仲介手数料は上限が定められているものの下限は定められていないため、不動産会社によっては値引きに応じてくれる可能性も期待できます。
大手の場合は担当者がマニュアルに沿って動くため、仲介手数料の値引が期待できない一方で、売り手の要望を考慮してくれやすい地域密着の不動産会社では値引きが期待できると言えるでしょう。
また、不動産会社によっては計算式の「3%」に当たる部分を少ないパーセンテージで計算してくれるため、複数社に見積もりを依頼するなど、媒介契約前に確認しておくようにしましょう。
印紙税(印紙代)
印紙税は印紙代とも呼ばれており、一部の文書に対して課せられる税金のことを指しています。
不動産を売却する際に取り交わす売買契約書にも印紙税が掛かり、仲介手数料と同様に売買価格に応じて金額が異なります。
売買価格 | 税率 | 軽減税率 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
なお、2014年4月1日から2018年3月31日までに作成された文書に対しては、消費者の税負担を軽減するための措置が設けられており、約半分の金額となっています。
印紙税は税金の一つであるため、軽減税率以外に費用を抑える方法は皆無です。売買契約書に貼付する形で納付するため、売買契約までに準備しておきましょう。
登録免許税(所有権移転登記・抵当権抹消登記)
不動産を購入や売却した際には、所有者の名義変更する手続きを行わなければなりません。
この手続きは不動産登記法で定められており、登記を基に固定資産税の請求などが行われています。
また、売却予定の不動産を購入する際に住宅ローンを利用している場合は、契約時に抵当権が設定されています。
抵当権とは、何らかの理由で債務者の返済が滞った際に債権者である金融機関が住宅などを担保にして弁済を受ける権利のことを指しています。
不動産の売却と同時に住宅ローンを完済する場合、抵当権を抹消する手続きが必要です。これらの手続きに対しては登録免許税が課せられており、所有権移転登記には以下のような税率が設けられています。
所有権移転登記に伴う登録免許税
物件種別(売買の場合) | 税率 | 軽減税率 |
土地 | 2.0% | – |
建物 | 2.0% | 0.3% |
これらの税率は固定資産税評価額が基準となっており、建物の場合は2020年3月31日までは軽減税率が設けられています。
ただし、所有権移転登記については買い手が負担するケースが多い傾向にありますが、どちらが負担するかを協議の上、売買契約書にきちんと明記するようにしましょう。
抵当権抹消登記に伴う登録免許税
- 1筆につき1,000円
抵当権抹消登記に伴う登録免許税は1つの不動産に対して1,000円が基準となっており、土地と建物の抵当権を抹消する場合は2,000円掛かります。なお、この手続きに伴う登録免許税には軽減税率や特例は設けられていません。
税金をシミュレーションしたい場合は不動産売却にかかる税金をシミュレーションしてみようが参考になります。
譲渡所得税
不動産を売却する際に出た利益は、売却益と呼ばれています。売却益が出た場合、売却益に対して譲渡所得税が課税されます。この税金は所得税と住民税から構成されており、不動産の所有期間に応じて以下のように税率が異なります。
区分 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
短期(所有期間5年以下) | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期(所有期間5年超) | 15.315% | 5% | 20.315% |
譲渡所得税を算出する際には、以下のようにまずは譲渡所得を求めた上で課税譲渡所得を求める必要があります。
譲渡所得
譲渡所得=売買価格-(取得費+譲渡費用) |
↓
課税譲渡所得
課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除 |
譲渡所得税は、課税譲渡所得の金額をそれぞれの所有期間に応じた税率を乗じて算出されます。なお、譲渡所得税には2011年に発生した東日本大震災の復興支援のために設立された復興特別支援税が、2013年から税額に2.1%上乗せされています。
司法書士の依頼費用
所有権移転登記や抵当権抹消は自分で手続きすることもできますが、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士に依頼すると、登録免許税の他に司法書士への報酬が発生します。
費用は司法書士が所属する事務所や手続き内容によって異なりますが、相場を以下の表で示しています。
手続き内容 | 相場 |
所有権移転登記 | 45,000円程度 |
抵当権抹消 | 15,000円程度 |
測量費/解体費など
測量が適切に行われていない土地を売却する際には、不動産会社や買い手から測量を求められる場合があります。
なぜなら、買い手が建物を建てる際に、隣接する土地との境界を巡ってトラブルに発展するケースが考えられるからです。
測量は決して必須ではありませんが、境界杭がない場合や地価が高い土地を売却する場合は売却前に測量しておくことをおすすめします。
この場合、売却前に測量を行うため、費用はもちろん売り手の負担となります。
測量費用は土地があるエリアや面積によって異なりますが、一般的な相場は30~50万円程度だと言われています。
ただし、土地の形状が複雑な場合やすでに隣接する土地の所有者とトラブルになっている場合などは、費用が高額になる可能性もあります。
築年数が古い建物が建った土地を売り出すよりも、建物を解体した上で更地として売り出した方が買い手がつきやすい傾向にあります。
なぜなら、住宅を建てたり駐車場として利用するなど、活用方法が幅広いからです。
しかし、建物を解体する際には費用が掛かり、決して安い金額ではありません。解体費用は建物の構造や面積によって費用は異なりますが、一般的な相場は1坪あたり25,000~40,000円程度だと言われています。
例えば37坪の2階建て木造住宅の場合、解体費用は160万円程度掛かります。
解体費用は不動産会社によっても異なるため、一括見積もりサイトを利用して金額を比較すると良いでしょう。
なお、これらの費用以外にも、ハウスクリーニングや廃棄物処理費用が必要になるケースもあります。
振込手数料
売買契約時に買い手から手付金を受け取り、残金は決済と引き渡し時に受け取ります。
少ない金額であれば現金でやり取りするシーンも想定できますが、不動産は比較的高額な取引のため、現金よりも振り込みで行われるのが一般的です。
この場合、振り込みする際に手数料が発生します。トラブルを未然に防ぐためにも、売買契約時に振り込み手数料をどちらが負担するのかきちんと協議しておきましょう。
ちなみに売り手が振り込みでの支払いを希望するようであれば、売り手が振り込み手数料を負担するのが一般的です。
一方で、売り手の希望に関わらず買い手が振り込みでの支払いを希望する場合は、買い手が振り込み手数料を負担します。
このように、支払い方法をどちらが希望するかがポイントになるため、事前にきちんとした協議が求められると言えるでしょう。
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不動産売却時の注意点

不動産を売却することは、余程の資産家でもない限り人生において何度も経験することではないでしょう。
だからこそ失敗しないために、以下のような注意点を押さえておきましょう。
【注意点1】不動産会社を選ぶ時
媒介契約は不動産会社と結びますが、直接やり取りするのは担当者です。
そのため、不動産会社名に囚われることなく担当者の人柄や仕事ぶりをしっかりと見極めることが大切です。
人柄が良くても、スキルや知識に乏しい担当者もいるかもしれません。そこは自分の目を信じて、この人になら任せられると思える担当者を見つけましょう。
また、場合によっては、売却して手放す方法と賃貸として貸し出す方法で悩む人もいるのではないでしょうか。
このような悩みを担当者に相談した際に、どのような言葉が返ってくるかがポイントです。
どちらの方法を選んだら、どのようなメリット・デメリットがあるのかといった明確で根拠のある回答が得られたら、スキルや知識が高いと判断できると言えるでしょう。
【注意点2】不動産の査定時
不動産の査定を依頼する際には、複数の不動産会社に依頼し、提示された査定額を比較することが大切です。しかし、訪問査定は不動産会社ごとに行われるため、その都度スケジュールを合わせるのは大変です。
某大手不動産会社の場合、複数社の査定を15分ごとにスケジューリングし、売り手と不動産会社の負担が最大限少なく、かつ効率的な方法も用いてくれます。
この方法だと3社の訪問査定を受けても1時間程度で済み、室内の清掃や整頓も一度で済むので便利です。
なお、一括査定サイトを利用する際は、査定額を提示後に執拗な勧誘を行う不動産会社もあるので注意が必要です。
一括査定サイトは複数社に一度に査定を依頼できる非常に便利なサイトですが、依頼する不動産会社の数が多いほど勧誘のリスクは高まると言えるでしょう。
ただし、勧誘を一切行っていないと謳っているサイトや匿名で査定を依頼できるサイトもあるため、自分に合ったサイトを利用するようにしましょう。
また、不動産会社によってはリフォームして売り出すことを得意とする不動産会社も存在します。
このような不動産会社の訪問査定では、必要以上に壁の劣化やカビの程度を指摘される可能性が高いので注意が必要です。
【注意点3】不動産の売買契約時
購入希望者が物件の購入意思を固めると、売買契約に移ります。
売買契約書には重要事項の説明や取引される金額などが記載されていますが、以下の点については特に注意して確認しておきましょう。
- 契約者名
- 売買金額
- 測量の有無
- 手付金と解除に伴う違約金
- 支払い方法と時期
- 所有権移転登記や物件の引き渡し時期
- 固定資産税の負担
- 瑕疵(かし)担保責任 など
瑕疵(かし)担保責任については、売買契約書で定めた期間内に欠陥が発覚した場合、売り手が修繕するなどの義務が生じます。
最悪の場合は契約解除になるケースや多額の損害賠償を請求されるケースもあるため、瑕疵(かし)担保責任を負う期間をきちんと協議することが大切です。
【注意点4】売却時にかかる費用
不動産を売却する際に掛かる費用は、仲介手数料や各種税金などさまざまです。売買金額に応じて金額が高くなる費用もあるため、決して少ない金額で済まないのが現状です。
固定資産税や所有権移転登記などの負担については、売り手と買い手のどちらが負担するのか明確にしておかなければ、トラブルに発展するリスクがあります。
また、異常に低い仲介手数料や無料で仲介を引き受けてくれる不動産会社も存在しますが、同時にサービスの質も低い可能性もあるので注意が必要です。
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不動産売却に関するQ&A

ここでは、不動産売却でよくある質問と共に回答を順に解説していきます。
【Q1】査定にかかる期間はどのくらいですか?
不動産会社の査定方法には机上査定と訪問査定の2種類があり、机上査定を経て訪問査定に移るのが一般的です。
机上査定は物件情報をベースにして査定額を算出し、訪問査定は机上査定の情報をベースにして不動産会社の担当者が実際に物件を見学して査定額を算出する仕組みとなっています。
机上査定に要する時間は30分から1時間程度ですが、訪問査定では公的機関でインフラ状況などを確認しなければならない場合があるため、数日程度の期間を要するのが一般的です。
【Q2】近所に知られずに売ることはできますか?
適度なご近所付き合いはコミュニケーションの一環として許容範囲かもしれませんが、売却理由を詮索されるといった過度なコミュニケーションを望まない人も多いことでしょう。
しかし、不動産を売り出していることが新聞の折り込み広告やポスティングによって近所に知られることを防ぐため、外観の画像や物件詳細を掲載しないといった手段も利用できるので安心です。
ただし、情報掲載に制限が出ることから買い手がつきにくい可能性もあることを心得ておかなければなりません。
まずは不動産会社の担当者にその旨を伝え、スムーズに売却できる戦略を提案してもらうと良いでしょう。
【Q3】売却前にリフォームはした方がいいですか?
築年数が古い場合や傷や汚れが目立つ場合、リフォームが必要になる可能性も考えられます。
ただし、「所有している不動産を早く・高く売るコツ」の章でも解説した通り、価格設定の際にリフォーム費用をそのまま上乗せできないのが現状です。
そのため、不動産会社の担当者にリフォームの必要性を確認し、状況に応じて対応すると良いでしょう。
大掛かりなリフォームはお金の無駄遣いになる可能性があるため、できる限り現状維持のままで売却することをおすすめします。
【Q4】住宅ローンが残っている不動産の売却は可能ですか?
住宅ローンの残債がある場合、不動産の売却と同時に完済するのが原則です。
しかし、売却金額で残債が補えなくても、自己資金を充てて完済する手段もあります。
また、住み替えローンや買い替えローンを提供している金融機関もあるため、住宅ローンの残債を新たなローンに上乗せ、もしくは二重ローンを組めば売却できます。
ただし、新たな住宅ローンに上乗せする金額があまりにも多い場合や二重ローンの場合は返済額が増えるため、日々の家計を圧迫しない範囲で組むようにしましょう。
【Q5】住みながら売却することは可能ですか?
現在居住中の不動産を売却する場合、売却できるまで、もしくは住み替え先が決まるまでは住みながら売却を進められます。
ただし、購入希望者が現れると内覧を受け入れなければならず、その都度清掃や整頓が必要です。
また、購入希望者はいつどのようなタイミングで現れるかわかりません。
購入希望者のスケジュールによっては、連絡を受けた翌日を希望される場合もあるため、心の準備が求められます。
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スケジュールや資金計画を立てて不動産売却を成功させよう

不動産の売却を検討したら、まずは不動産の相場をリサーチするといった情報収集からスタートしましょう。
同時に不動産会社選びや担当者の見極めを進める場合は、一括査定サイトの利用が非常に便利です。
売却すると一時的にまとまった金額を手にできるといった単純なものではなく、住宅ローンの残債との兼ね合いも考慮しなければならず、仲介手数料、各種税金などのコストも掛かります。
相場よりも低い価格で売却してしまうといった失敗をしないためにも、売却までのスケジュールや資金計画をきちんと立てて、不動産の売却を成功させましょう。
また、一括査定サイトについて詳しく知りたい・比較したいという場合は下記の記事を参考にしてください。
参考:【2019年最新】不動産一括査定50サイトをジャンル別に比較!