複雑な手続きが多く、初心者にはハードルが高い不動産売却は、売却仲介を請け負ってくれる不動産会社に依頼するのが一般的です。大切な財産を自分に代わって売ってくれる相手を選ぶため、不動産会社選びは売却成功のカギともいわれます。
ここでは不動産会社選びの際、よく注目される会社の規模や選び方のポイント、大手と中小それぞれのメリット・デメリットを解説します。売りたい不動産にぴったりな会社を選べるよう、じっくりチェックしていきましょう。
大手か中小は重要ではない

結論から言うと、不動産売却において担当が大手不動産会社かどうかは重要ではありません。
確かにインターネットが普及する以前は、大手不動産会社の方が、全国規模のネットワークを備えており、顧客情報も中小不動産会社より充実していました。
それらの情報を中小不動産会社が手に入れられる機会も少なく、大手不動産会社に頼んだ方が売れやすかったのです。
しかし、現在ではレインズという全国各地の不動産情報が集約されるシステムや、民間企業の不動産情報サイトも大きく発展し、全国の不動産情報が手に入ります。
それはどの会社でも同じように不動産売却に関する情報が手に入り、同時に発信できるということです。
結果として、それぞれの不動産会社が持つインターネットに掲載されていない情報や、販売する営業マンの能力に左右されるようになりました。
それぞれの特徴を理解して、自分が売りたい不動産にあったところを選ぶことを心がけましょう。
【質問】
不動産を売却する方法としては、仲介業者に頼むしかないのでしょうか?他に売却方法があれば記載してください。
【監修者コメント】
不動産の売却を依頼する先としては、仲介業者に頼むのが確かに一般的です。しかし、場合によっては仲介業者以外の業者への依頼をおすすめします。例えば、早急に売却しないといけない場合は、売値が3割ほど安くなりますが、買い取り専門業者に依頼すればすぐに売ることができます。
また、離婚による夫婦間の売買や、親子・親戚間での売買の場合でしたら、手続きだけを代行してくれて直接売買をサポートしてくれる業者もあります。
不動産会社を選ぶときのポイント

「不動産会社独自の情報量」と「担当営業マンの能力」という2つの視点から、不動産会社を選ぶための5つのポイントを解説します。
免許番号と行政処分歴を確認
不動産会社が悪質な会社ではないか、過去の実績や行政からの処分を受けていないか確認するには、2つのポイントがあります。
- 会社のサイトや実店舗で免許番号が確認できる
- 行政庁で実績や行政処分歴を確認
ここでいう免許は、宅地建物取引業という不動産売買の仲介に必須の免許で、国土交通大臣か都道府県知事、どちらかから交付されます。もし免許を取得していないのに不動産仲介を請け負っているとする会社であれば、避けた方が無難です。
免許番号が分かった上で、念のため過去の行政処分歴を知りたい場合は、免許を交付した行政庁にある宅地建物取引業者名簿の閲覧を依頼しましょう。なお、国土交通大臣免許であれば、インターネット上でも確認できます。
免許を交付した行政 | 確認先 |
国土交通大臣 | 国土交通省「ネガティブ情報等検索システム」 |
都道府県知事 | ・都道府県庁の建設部など担当部署に直接依頼して確認する ・都道府県公式ホームページで閲覧できる県もある |
【質問】
免許番号からは、他に何かわかることはないのでしょうか?
【監修者コメント】
宅建業者の免許番号は、「国土交通大臣免許(●●)○○号」「東京都知事免許(●●)××号」といように記載されています。このカッコ内の数字●●は、免許更新の回数になります。
免許の更新は5年ごとですので、(1)となっていれば登録してからまだ更新をしていない、つまり宅建業を掲げてから5年以内の業者、ということになります。もし、長く宅建業を営んでいる業者に依頼したいのであれば、カッコ内の数字が多い業者を選ぶと良いでしょう。
売買物件の媒介業務をしている不動産会社を選ぶ
不動産会社と一口に言っても、様々な業務を請け負っているため、どこでも売買仲介を頼めるわけではありません。不動産会社が請け負う業務には、大きく分けると次の3つがあります。
業務 | 内容 |
不動産取引業 | 物件の売買を中心とした取引を、不動産会社が媒介したり、直接買い取って売却したりする業務 |
不動産賃貸業 | 土地や部屋、駐車場、オフィスビルなどを貸し借りする賃貸運営をメインとする業務 |
不動産管理業 | 賃貸物件の状態維持やマンション清掃など、管理を行う業務 |
業務内容を見ると分かるように、不動産仲介取引を請け負ってくれるのは、不動産取引業を業務としている不動産会社だけです。特に、自分が売りたい不動産をメインとした不動産取引業務を行っている会社を選べば、より売りやすくなります。
たとえば土地を売りたいのなら、土地をメインとする不動産取引業を多く請け負う不動産会社の方が、土地仲介売却の経験が豊富だからです。
【質問】
不動産取引業と仲介業とは同じでしょうか?もし違うのならば、何が違うのか説明してください。
【監修者コメント】
実際には「不動産取引業」という言葉はあまり使いません。もし言い換えるのならば「不動産流通業」となります。もしくは「不動産仲介業」となります。
しかし、仲介の取引形態というものは存在しており、不動産業者は取引態様の明示が義務付けられています(売主・代理・媒介)。「仲介」は「媒介」と同じ意味です。また、仲介業には売買だけでなく賃貸の仲介も含まれます。
不動産の立地条件を考慮して選ぶ
不動産会社には、得意とするエリアがあります。地域の中小不動産会社なら、その町全体から山際の土地など、カバー範囲が特有です。
大手不動産会社は、一般的に新興住宅街など人が多く住むエリアに強いとされます。
大手が進出しないようなエリアに物件がある場合は、大手不動産会社を頼っても売れにくい可能性があります。
地元の不動産会社の方が情報をたくさん持っていることが多いので、中小がおすすめです。
- 人が多いエリアの物件:大手不動産会社
- 人が少ないエリアの物件:その土地に近い中小不動産会社
店内の様子を確認する
実店舗に足を運べる場合は、積極的にお店の様子を見に行きましょう。大切な不動産の売却を依頼する会社を自分の目で確認すると同時に、不動産会社は様々な法律を守る必要があるため、いい加減な会社を避けることにつながります。
特に見ておきたい部分を、表にまとめました。実店舗を見に行くとき、参考にしてください。
チェックポイント | 注意したい状態 |
店前のチラシ | ・表示が見づらい ・日当たり最高や掘り出し物件、完全、抜群、特選、最高級など、不動産公正取引協議会が決めている使用禁止用語が使われている ・新しいチラシが少ない |
店内の整頓整理 | ・書類が乱雑に積まれている ・資料を出してくるのに時間がかかる ・個人情報の扱いに不安がある |
スタッフの身なり | ・言葉遣いや身なりが気になる ・不快感を覚える |
実店舗に足を運べない場合は、会社の住所をグーグルマップで検索するのも1つの方法です。外観や周囲の状況が、年数は場所によって異なるものの、画像として確認できます。
【質問】
他に業者を選ぶポイントはありますか?あれば説明をお願いします。
【監修者コメント】
チラシ(広告)の確認は大切です。店舗によっては店頭にチラシをはりだしていないところもありますので、実際にその店で作成したチラシを見せてもらうと良いでしょう。
ネット広告でも同じです。物件の情報をどのように出しているのかをチェックすることをおすすめします。写真や細かい情報を豊富に掲載しているチラシ(広告)を作成してくれる業者を選ぶ方が、売却が成功しやすいと言えるでしょう。
担当者との相性もチェック
不動産会社に仲介を依頼した後、最も多く接するのが不動産会社の担当者です。信頼できる不動産会社が見つかっても、信頼できる担当者とは限りません。責任を持って仕事をしてくれる担当者かどうかチェックしておきましょう。
チェックポイント | |
1 | 担当者に分からないことを質問しても丁寧に答えてくれる |
2 | 査定額や仲介手数料について詳しく説明してくれる |
3 | 自分の会社の特色やメリットだけでなく、デメリットも教えてくれる |
4 | 査定だけを依頼しても、態度が変わらない |
5 | こちら側の事情について、詳しく聞いてくれる |
6 | 担当者は常に同じで、体調不良など特別な理由がない限り変わらない |
高く売却するコツは一括査定サイトを利用する

公益財団法人不動産流通推進センターによると、2018年不動産業統計において不動産代理業・仲介業を行う事業所は49,538カ所あります。上記の視点で信頼できる不動産会社を選別するには、1社ずつ調べるのは大変です。
そこで、一括査定サイトを利用して、複数社の不動産会社で比較してみましょう。売りたい不動産の住所や種類に応じて、適切な不動産会社をピックアップしてくれます。他にも、次のようなメリットがあります。
- 不動産会社の得意分野を把握しやすい
- 不動産のジャンルに合う会社が見つかりやすい
- 電話・メール対応から担当者についても判断できる
また一括査定サイトで出された不動産の査定額は、その不動産の相場としても活用できます。金額だけが全てではありませんが、事前に売却時の税額や手数料の計算などを行い、資金計画をより具体的に立てられるメリットがあります。
一括査定サイトは不動産側から資金を得ているため、依頼者側がお金を支払う必要はありません。無料で受けられる一括査定を利用して、不動産会社選びをよりスピーディーに行っていきましょう。
おすすめの一括査定サイト3選
サイト名 | 利用者数 | 対象エリア | 提携会社数 | 同時依頼数 |
イエウール | 1,000万人 | 全国 | 1,700社 | 6件 |
イエイ | 400万人以上 | 全国 | 1,700社以上 | 6件 |
リビンマッチ | 440万人 | 全国 | 1,400社 | 6件 |
イエウール:全国1,700社以上に対応
地方・地域密着型の中小規模不動産業者にも対応しているので、都市部以外に所在しているマンションや一戸建てなどの不動産を売却したい人におすすめです。
利用者数 | 1,000万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6社 |
取引件数 | 非公開 |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | 株式会社Speee (Speee, Inc.) |
サイト内では一戸建てや土地など、物件の種類別に売却手順の説明も掲載されています。しつこい勧誘があったなど、評判の悪い不動産会社は登録から外されているので安心です。
イエイ:お断り代行サービスを提供
大手不動産会社だけでなく、地域に密着した地方に強い不動産会社への査定も一括で依頼できます。
利用者数 | 400万人以上 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,700社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 1,000件以上 |
顧客満足度 | 97% |
運営会社 | セカイエ株式会社 |
都心部だけでなく、地方の物件を売却したい人にもおすすめです。また、査定を依頼した不動産会社からの営業連絡を断りたい際に、代わりに断ってくれる「お断り代行」サービスがあるため、営業電話を断りにくい人におすすめです。
なお、依頼先の不動産会社は自分で選べる仕組みとなっています。
リビンマッチ:利用したいサイト第1位
都道府県別に、このサイトに登録している不動産会社の情報をあらかじめ調べることができ、その中から売却査定実績の多い不動産会社を選べることが特徴です。
利用者数 | 440万人 |
対象エリア | 全国 |
提携会社数 | 1,400社 |
同時依頼数 | 6件 |
取引件数 | 14万件(年間) |
顧客満足度 | 98% |
運営会社 | リビン・テクノロジーズ株式会社 |
全国展開しているような大手の不動産業者ではなく、どちらかと言えば地域に密着した中小規模の不動産会社の登録が多いので、相続などによる地方の不動産の売却を考えている人におすすめです。
大手不動産会社のメリット・デメリット

会社規模も、不動産会社の見極めポイントとなります。そこで大手不動産会社を選んだ場合のメリット・デメリットについても知っておきましょう。
実績があり信頼できる
不動産業はサービス業であり、接客業です。特に売買を仲介する業務は、相手がいないと成り立ちません。大手不動産会社はこれまでの実績で多くの人から信頼されたからこそ、成長した会社です。顧客情報も広く集まり、信頼できます。
不動産業者には高い利益を上げようと、違法な取引を進めたり、不誠実だったりする悪徳業者もいます。多くの人から選ばれ、信頼度が高く販売実績も豊富なことは大手不動産会社を選ぶメリットの1つです。
広告費用をかけるので購入希望者が多く集まる
不動産売却時の宣伝は、担当者の技量や売主の資金力にも左右されます。大手は広告や宣伝費にも費用がかけられるのと同時、大抵の買主はまず大手の不動産業者で情報を集めるため、購入希望者も自然と多くなり、不動産が早く売れる可能性が高くなります。
全国規模で宣伝したいような特殊な不動産や、移住希望者に情報を届けたいなど、希望に合わせた宣伝ができるのも強みです。
両手取引であることが多い
大手不動産会社を選ぶデメリットの1つに、両手取引の可能性があります。両手取引とは、1つの不動産会社が買主と売主双方を結び付け、双方から不動産売買の手数料を得るという方法です。
両手取引が出来れば、その不動産会社は1つの不動産から2倍の仲介手数料がもらえます。一部の国では法律上規制されていますが、日本では禁止されていません。調査によれば大手29社のうち、6社の両手比率が50%を超えていることが分かっています。
法律上規制されていないのに問題視されているのは、買主は「安く買いたい」一方で売主は「高く売りたい」からです。両手取引したい不動産会社の意図により、安く買いたい買主のために、売主側が値引きを要請される可能性があります。
【質問】
両手取引を避けて早く売却をするために、売主ができることはありますか?
【監修者コメント】
どうしても両手を避けたい場合は、売却専門の仲介業者を選ぶのも一つの手です。売却だけしか取り扱っていませんので、売主の利益を第一に考えてくれます。よって、買主からの値下げ交渉に応じることも少なく、結果として高く売却できる可能性が高くなる傾向にあるようです。
中小の不動産会社のメリット・デメリット

地元の中小不動産会社に依頼した場合は、どのようなメリット・デメリットがあるか解説します。
親身になって対応してもらえる
不動産会社にもよりますが、中小不動産会社は人数が少ないからこそ、少数精鋭で頑張っている不動産会社が多くあります。大手不動産会社に比べて、担当者1人当たりの負担が少ないことから、やる気のある不動産業者を選べば親切に対応してもらえるでしょう。
他の不動産会社でも売れにくいような特殊な不動産でも、顧客ごとの柔軟な対応力を持つ地元の中小不動産会社なら、買主を見つけてくれるかもしれません。
地域密着型で地元の情報に精通
そのエリアに強い不動産会社は、大手が把握していない情報を持っているからこそ、都市部にない不動産売却に有利です。
特に地方の中でも、大手不動産会社の支店がないような郊外にある不動産を売却する場合は、その地元の不動産業者のほうがおすすめです。
地域密着型の場合、その地域にあることを条件に、不動産を探している顧客情報を持っていることがあります。すると多少値段が高くても、その不動産を買いたいと希望してくれるかもしれません。予定より高く売却できる可能性もあるのが、中小不動産会社です。
大手に比べて宣伝力が弱い
デメリットは、知名度がなく、大手のように大きく宣伝する力がないという点です。
たとえばインターネット上に情報を掲載する期間が大手より短かったり、個別のサイトから効率よく買主へアピールできなかったりします。地元の買主情報は持っているかもしれませんが、大手に比べると買主を見つけるまでに時間がかかる可能性が高いです。
特に全国規模で広く買主を探した方がよい特殊な物件は、中小不動産会社だと売却に時間がかかり、予定より長期戦になるかもしれません。自分が売りたい期間によっては、郊外でも大手不動産会社の宣伝力に頼った方が良いこともあります。
不動産会社選びは重要なので慎重に行う

土地の広さや立地、日当たりなど、1つとして同じ条件の不動産はありません。
同じマンションの同じ階の部屋でも、そこで暮らしていた人の状況によっては、値段が異なることもままあります。
不動産会社選びは、そうした条件の異なる不動産に合わせて選ぶことが大切です。
また売主側が用意できる資金や、不動産売却の理由によっても、不動産の価格帯や売り方が異なります。
一括査定サイトなら、少ない情報から査定額が分かると同時に、不動産会社の特色についてもチェックできます。
より良い不動産売却を目指すために、まずは一括査定サイトを利用して、不動産会社をチェックしてみましょう。
【質問】
一括査定サイトを利用するメリットやデメリットが他にもあれば、説明をお願いします。
【監修者コメント】
「1つとして同じ条件の不動産はありません」が、それを少ない条件で均して査定価格を出してくれるのが一括査定サイトです。そこで出された査定価格は「絶対」的なものではありません。あくまでも平均的な価格の目安として捉えることが大切です。
個々の不動産のきちんとした査定は、やはり経験があり、信頼できる業者の担当者に任せるしかありません。それを選ぶ入口として、複数の不動産会社を一度に比較することができる一括査定サイトを活用するとよいでしょう。
また、一括査定サイトについて詳しく知りたい・比較したいという場合は下記の記事を参考にしてください。
参考:【2019年最新】不動産一括査定50サイトをジャンル別に比較!