不動産売却で3000万円特別控除を受けるための基礎知識

不動産を購入する際には、不動産取得税や印紙税などの各種税金を納付しなければなりません。また、不動産を売却する際にも所有権の移転登記に対して登録免許税や印紙税が課せられます。さらに、売却益が出た場合には、所得税と住民税を合わせた譲渡所得税がかかります。

このように不動産の取り引きには複数の税金がかかりますが、一定の条件を満たせば特別控除が受けられます。ここでは、特別控除の一つである「3,000万円特別控除」について知識を深め、不動産を売却する際の参考にしてみてください。

不動産売却で受けられる3,000万円の特別控除とは

1989年4月1日から日本で初めて消費税が導入され、2019年10月からは三度目の増税が予定されています。消費者の税負担が増える中、少しでも税負担を軽減することを目的として、一部の税金には特別控除や軽減措置が設けられています。

マイホームを売却した時のみ適用できる

土地や住宅などの不動産を売却した際に、住宅ローンの残債によっては損失が出るケースもありますが、利益が出るケースもあります。この利益は「売却益」と呼ばれるもので、売却益に対して所得税がかかります。

所得税には、勤務先から支給される「給与所得」や株式投資で配当金を得た際の「配当所得」など10種類に区分されています。売却益に対する所得税は「譲渡所得税」と呼ばれるもので、不動産の所有期間で区分された税率が定められています。

税金の種類は非常に多く、度重なる消費税の増税も相まって消費者の税負担は増える一方です。そこで消費者の税負担を軽減するために、一部の税金には特別控除や軽減措置が設けられています。

売却益に対して課せられる譲渡所得税には「3,000万円特別控除」という控除制度が設けられており、マイホームを売却した時のみ適用できる制度です。従って、不動産投資の物件や相続した土地の売却には適用されません。

譲渡所得から3,000万円控除できる

売却益に対して課せられる譲渡所得税は、所得税、住民税、復興特別所得税で構成されており、不動産の所有期間5年を境にして税率が異なります。なお、所得税の部分には復興特別所得税の2.1%が含まれています。

譲渡所得は、売却益から不動産の購入や売却する際にかかった費用を差し引いた金額を指しており、3,000万円特別控除というのは譲渡所得が3,000万円までなら譲渡所得税が非課税になるという制度です。

従って、譲渡所得が3,000万円より少なかった場合、課税対象とならないため税額はゼロになります。

ケース別3,000万円の控除の受け方

3,000万円特別控除を受けるためには、6つの条件を満たしている必要があります。また、主に居住する家屋が対象となるため、別荘やセカンドハウスには適用されません。

家屋と敷地の所有者が異なる場合

新たな住宅を建設する間に仮住まいとして使用した住宅を売却する場合、3,000万円特別控除は適用されないので注意が必要です。この他にも適用されない条件が複数設けられており、控除の適用を受けるためには適用外となる項目から外れていることを確認しなければなりません。

マイホームとして使用している住宅を売却する場合、土地と建物で所有者が異なるケースもあります。このようなケースでは、以下の要件をすべて満たせば控除が受けられます。

  • 土地を建物と同時に売却すること。
  • 建物の所有者と土地の所有者とが親族関係にあり、生計を一つにしていること。
  • 土地の所有者は、建物の所有者と同居していること。

こういったケースでは、土地の所有者と建物の所有者それぞれが3,000万円までの控除を受けられるのではなく、合わせて3,000万円の控除が受けられます。

例えば、両親が所有している土地に自分名義の建物を建てている場合や夫婦のどちらか一方が土地と建物に名義を分けている場合などが挙げられます。

相続した家に同居していた場合

少子高齢化が顕著になった近年、後継者不足や相続した不動産が放置されるなど全国各地で空き家問題が深刻化しています。空き家バンクや補助金を設けて国が対策を講じているものの、倒壊や崩壊のリスクがある空き家は数多く存在しています。

住宅を相続した場合、所有しているだけでも固定資産税や都市計画税がかかりますが、立地条件が悪いと活用方法が見出しにくいのが現状です。相続の場合でも、居住していた住宅を売却するのであれば3,000万円特別控除の適用となります。

また、相続人が被相続人と同居していた場合や、相続した後に転居して売却に至った場合でも適用されます。ただし、売主と買主が親子などの特別な関係の場合は適用されません。

実際に控除を適用したシミュレーション

3,000万円特別控除を受けるには、不動産を売却した翌年に確定申告で手続きしなければなりません。また、売却益に対する譲渡所得の計算は複雑なため、予め確認しておくと安心です。

まず一括査定サイトを利用して売却価格の相場を知ろう

一括査定サイトとは、物件種別や所在地などの情報を入力するだけで、複数の不動産会社に対して一括で査定を依頼できるサイトです。一括査定サイトで不動産の売却価格相場を把握すると、3,000万円特別控除を受けた場合に納付しなければならない税額ををシミュレーションできます。

また、不動産の査定額は業者によって異なり、100万円近く差が生じるケースもあります。そのため、不動産を売却する際には複数社に査定を依頼することをおすすめします。

一括査定サイトを利用すると複数社から提示された査定額を比較でき、自分に目的に合った業者を見つけられることも魅力の一つです。

所有している不動産の譲渡タイプを把握する

3,000万円特別控除を受ける場合には、不動産を売却した際に出た売却益から不動産の購入や売却にかかった費用を差し引いて算出される「譲渡所得」の金額が鍵を握っています。

譲渡所得は不動産の所有期間に応じて、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類に区分されています。不動産の所有期間5年以下の場合は短期譲渡所得、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となります。それぞれの税率は、以下の表で示しています。

区分 所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得
(所有期間5年以下)
30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得
(所有期間5年超)
15.315% 5% 20.315%

なお、2011年に起こった東日本大震災の復興を目的として新たな税金が特別措置として講じられており、2015年から25年間は所得税に2.1%が「復興特別所得税」として上乗せされます。

この表を見るとわかるように、不動産の所有期間が5年を超えた方が税率が低いため節税に繋がります。

譲渡所得税(税金)を求める計算式

譲渡所得税の税額は、まずは短期譲渡所得や長期譲渡所得のベースとなる「課税譲渡所得」を求めることからスタートします。譲渡所得は、不動産を売却した際に出る「売却益」がそのまま反映されるという単純なものではなく、以下のような計算式で算出されます。

・課税譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除

この計算式の「特別控除」に3,000万円特別控除の金額が当てはまり、その他の用語については以下のようになります。

  • 課税譲渡所得:譲渡所得税のベースとなる金額。
  • 売却価格:売却した不動産の金額。
  • 取得費:不動産の購入にかかった手数料などの費用。
  • 譲渡費用:不動産の売却にかかった手数料などの費用。
  • 譲渡所得税:課税譲渡所得に該当する税率を乗じた金額。

課税譲渡所得の金額がわかれば、以下の計算式のように課税譲渡所得に該当する区分の税率を乗じて譲渡所得税が求められます。

・譲渡所得税 = 課税譲渡所得×税率(長期譲渡 or 短期譲渡)

以上のシミュレーションを行うことで、おおよその税額が算出できます。

3,000万円特別控除を適用した例

計算式だけを見ても実際の税額がイメージしにくいため、ここでは以下の2条件に当てはめて3,000万円特別控除の適用例をご紹介します。なお、取得費については、国税庁が提示する売却価格に5%を乗ずる方法で算出しています。

【条件1】売却価格5,000万円・長期譲渡(築12年)

売却価格5,000万円の場合、取得費が売却価格の5%である250万円、譲渡費用を100万円とすると以下の計算式で算出できます。

売却価格5,000万円 -(取得費250万円 + 譲渡費用100万円 )- 特別控除3,000万円
= 課税譲渡所得1,650万円

課税譲渡所得が1,650万円とわかったところで、次に課税譲渡所得を算出します。なお、築12年で所有期間が10年を超えると過程すると、「10年超所有軽減税率の特例」が適用されます。

この特例は3,000万円特別控除と併用ができ、5年超の長期譲渡所得では20.315%が課税されるところ、6,000万円以下は14.21%と税率が下がります。詳細については、「不動産売却時に適用できる控除の種類」で解説します。

・課税譲渡所得1,650万円×税率(長期譲渡・10年超)14.21% = 譲渡所得税234.5万円

このケースでの譲渡所得税は、234万5,000円となります。

【条件2】売却価格8,000万円・短期譲渡(築4年)

売却価格8,000万円の場合、取得費が売却価格の5%である400万円、譲渡費用を100万円とすると以下の計算式で算出できます。

・売却価格8,000万円 -(取得費400万円 +譲渡費用100万円 )- 特別控除3,000万円
= 課税譲渡所得4,500万円

課税譲渡所得が4,500万円とわかったところで、次に課税譲渡所得を算出します。

・課税譲渡所得4,500万円×税率(短期譲渡)39.63% = 譲渡所得税1,783.3万円

このケースでの譲渡所得税は、1,783万3,000円となります。なお、取得費に関しては、不動産の購入にかかった費用や建築費用などの合計から減価償却相当額を差し引いて算出するのが一般的です。

しかし、古い不動産の場合などで正確な取得費がわからない場合、売却価格に5%を乗じた金額でも適用できます。

3,000万円の特別控除を受ける時の注意点

3,000万円特別控除を受けるには、公共事業を目的として不動産を売却した際に適用される「5,000万円特別控除」や農地保有の合理化を目的として不動産を売却した際に適用される「800万円特別控除」などの特例は併用できないので注意が必要です。

住まなくなってから3年後の年末まで売る

売却までに居住していたマイホームであれば、全てにおいて控除が適用される訳ではありません。売却の前から居住していない場合、転居してから3年経った年の年末までの売却が要件として設けられています。

近年は、全国各地で地震や豪雨などの自然災害が発生していますが、住宅が災害によって滅失した場合も同様です。

一般的な住み替えでは、余程長期間に渡って購入希望者が現れない場合を除いては3,000万円特別控除は適用されますが、災害で混乱の最中である場合でもできるだけ速やかな売却が求められます。

取り壊した場合は1年以内に譲渡契約を締結

古い建物がある土地を売却する場合、活用方法が限られるため、なかなか買い手が現れないケースも多いと言われています。このような場合、建物を解体した上で更地として売り出せば、活用方法の幅が広くなります。

3,000万円特別控除では、建物を取り壊した日から1年以内に譲渡契約が締結されていることに加え、転居してから3年経った年の年末までの売却が要件として設けられています。

また、建物を取り壊してから譲渡契約を締結した日までは、駐車場などとして貸し付けていないことが要件となっています。

住宅ローン控除との併用はできない

3,000万円特別控除は、5,000万円特別控除などの不動産の売却時に利用できる控除との併用はできません。住み替えを検討している場合、住宅を売却した際に3,000万円特別控除を利用し、新しい物件を購入した際に住宅ローン控除の利用を考えているかもしれません。

しかし、3,000万円特別控除は、住宅ローン控除とも併用できないので注意が必要です。なお、売却益が出ない場合は住宅ローン控除は利用できるので安心です。

確定申告が必要

3,000万円特別控除を受けるためには、売却した翌年に確定申告する必要があります。企業などに勤務する会社員であれば、給与に関する所得は年末調整で企業側が手続きしてくれます。

しかし、税制上、譲渡所得は給与とは異なる所得という位置づけになるため、給与以外の所得があった場合には確定申告で正しい税金を計算して納付しなければなりません。

確定申告は毎年2月16日から3月15日までの1カ月間と決まっており、この期間に税額の半分以上、5月31日までに残額を納付することになっています。

また、譲渡所得の内訳書と売買契約日の前日時点で、住宅を売却した人の住民票に記載された住所と住宅の所在地が異なる場合、戸籍附票の写しなどが必要です。

不動産売却時に適用できる控除の種類

不動産を売却した際には、3,000万円特別控除の他にさまざまな特別控除や軽減税率が設けられています。併用できない制度も多いですが、併用できる制度は積極的に利用して節税に繋げましょう。

軽減税率の特例

譲渡所得の解説の際に少し触れましたが、譲渡所得税の税率は5年を境にして「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に区分され、それぞれ税率が異なります。

税率は、短期譲渡所得よりも長期譲渡所得の方が低いことが特徴です。不動産を売却する際の特例として、「10年超所有軽減税率の特例」が挙げられます。

この特例は、譲渡所得の金額によって所有期間が5年超の長期譲渡所得よりも低い税率が適用されるというものです。それぞれの税率の違いを以下の表で示しています。

区分 所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得
(所有期間5年以下)
30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得
(所有期間5年超)
15.315% 5% 20.315%
長期譲渡所得
(所有期間10年超:6,000万円以下の部分)
10.21% 4% 14.21%
長期譲渡所得
(所有期間10年超:6,000万円超の部分)
15.315% 5% 20.315%

このように所有期間10年超の場合、譲渡所得が6,000万円を超えるか超えないかで税額が異なり、6,000万円以下の部分については14.21%と最も税率が低くなります。なお、10年超所有軽減税率の特例は3,000万円特別控除と併用できます。

買い換えの特例

不動産を売却する場合、ライフスタイルの変化や転勤などを理由として住み換えを行う人も多いと言われています。買い換えの場合、「買い換えの特例」が設けられており、一定の要件を満たせば売却益への課税を繰り延べできるというものです。

この特例は平成31年12月31日までに売却することが前提となっており、売却価格が1億円であることなどが要件として設けられています。なお、買い換えの特例は3,000万円特別控除と併用できず、3,000万円特別控除と同様に確定申告が必要です。

繰越特例

不動産を売却した際には必ずしも利益が出るとは限らず、住宅ローンの残債が多いと損失が生じます。不動産の売却で損失が出た場合、「繰越特例」という制度が利用できます。

不動産の売却時に出た損失は「譲渡損失」と言い、繰越控除は譲渡損失をその年の給与所得などから控除されます。しかし、金額によってはその年では全て控除しきれない場合があるため、繰越特例を利用すると譲渡損失を翌年以降の3年に渡って繰越できます

繰越特例を受けるには、3,000万円特別控除と同様に居住している住宅の売却や転居してから3年経った年の年末までに売却することなどが要件として設けられています。

なお、買い換えの特例と同様に、繰越特例も3,000万円特別控除との併用はできないので注意が必要です。

3,000万円の控除が適用されないケースもある

3,000万円特別控除には主に6つの要件が設けられており、全ての要件を満たさなければ適用されません。また、適用外となる要件も以下のように3つ設けられているため。国税庁の公式サイトで予めチェックしておくことをおすすめします。

  • 3,000万円特別控除を受けることだけを目的として入居したと判断された場合。
  • 住み換えのための住宅を新築する期間中に限って仮住まいとして使用した住宅など、一時的な入居が目的だと判断された場合。
  • 別荘やセカンドハウスなど、主に趣味や娯楽、保養を目的とした住宅の場合。

3,000万円の特別控除を受けるには必要要件を満たす必要がある

不動産の売却を検討している場合、売却益に対して特別控除が適用されると節税に繋がります。しかし、実際の売却益がどのくらいなるかわからないため、まずは一括査定サイトを利用して複数の不動産会社に査定を依頼してみましょう。

一括査定サイトは、提示された査定額で売却価格の相場が把握できるだけでなく、仲介を依頼するための業者の見極めに利用できます。より高値でスムーズな売却を目指すには、信頼できる優良な業者に出会うことが大切です。

また、3,000万円特別控除の利用を検討しているのなら、予め適用と適用外の要件を全て確認しておきましょう。